第2話 飛行訓練(だと思う)

 で、俺はまだ空を飛んでいた。

 そろそろ空を飛ぶのも飽きてきた。


 しかも、今日はでっかいクジラに乗って空飛んでる。っていうか、クジラが空飛んでる……。

 ぶっ飛んだ状況が続くあまり、熱が出そう……。


 ちなみにアオゾラオオクジラと言うそうです。


 クジラの背中に取り付けられた木製の甲板の上で、俺たちは立っている。にしても上空千メートルは軽いかも……。

「高ぇ……」


 ちなみに今日は別の街に行くそうだ。

「どうだ、いい景色だろう」

 ダーカスが俺の後ろにやって来る。


「そうですね。本当に……いい景色です」

 ばっと一面に広がる緑に圧巻していた。まるでどこまでも続いているよう。ここにはさぞかしいっぱいの動物が紛れ込んでいるのだろう。


「よし……ならここだ。お前は実践で学ぶタイプらしいからな」

 で、頭をガッって掴まれました。

 もう、なんか予感してた。


「そら、行ってこい!!」

 でも、空中に放り出すまでは予感できていませんでしたっ!!!?


「えぇぇええええっ!?」

 ばっちり甲板から放りだされ、ソラクジラの全貌すら見え始める。


 あ、このクジラおっきいな~。あれ? ヒレが片方に三枚もある不思議だね~。しかも、俺、空飛んでらぁ。本当にすごいねぇ。

 あ~あ、本当にぶっ飛んで、熱でちゃったよ。


「ほら、さっさと飛べ。落下死するぞ~」

「ぎょぇぇえええええええええええええええっ!!?」


 パニック状態で飛べるはずもなく俺は落下していった。

 


「……はぁ……はぁ……死ぬかと思った」

 空中、地面すれすれのところでマトに拾われた。んで、今右手を釣り上げられ、ソラクジラがいる高度はで引き上げられる。


「ちっ、地面まで行かなかったか」

「せめて、『飛べなかったか』にセリフ変えません!?」


 マトにぶら下げられたまま必死に突っ込む。


「いくらなんでも……これはまた、強引だねぇ」

 セロがダーカスの横について首を振る。

「あっ、と、手が滑った」


 俺のすぐ横を火の弾丸が通過。

 咄嗟にマトは俺の手を放し、それを避ける。

「うわっ、危ないじゃないですか!!」

「おぉれぇぇは……もっと危ねぇええええええぇぇぇ……!?」



「……キャッチ、サンキュ」

「……うん」


 俺の足がマトに掴まれたまま、再び上空に引き上げられている。

 ふっ、飛んだ紐なしバンジージャンプだぜ……。


「……ケイジ、飛べないね」

「この状況で飛べるか!?」



 で、再びソラクジラのいる高度へ。


「「ちっ、落なかったか」」

「落ちましたけどっ!?」


 上空、ソラクジラに並走して跳ぶマト。それに足を掴まれてぶら下がっている俺。マトは顎に手を当てブツブツ言う。


「副団長がまず落とした……。で、次にセロさんが落とした。……ここにいるのは三人。ってことは、次はあたしの番か……」

「……うん?」

「ケイジ、お約束は守らないとね」

「……はい?」


 おもむろに手を離される。

「バイバイ」

「バァイバァァアイっ!?」



「…………」

「「「飛べたな(ね)」」」

「死にたくはないからねッ!?」


 俺は必死に空飛び、ソラクジラに追いつき、甲板に乗り上がっていた。飛べたよ……確かに飛べたけどね……、飛べたんだけどんね!?


「マト……最後の一発、助ける気……なかったろ?」

「大丈夫。下が大きな湖ということを確認していたから!!」

「おう、それは良かったねッ!?」


 なんとも無邪気に親指立てるマト。マジでなんなんだよ、この連中……。

「……スパルタすぎね?」

「大丈夫、死にはしない。たぶん」

 ……予想通りの返答でした。



「てめえは実践で学ぶタイプ。なら、それを促したまでだ。感謝しろ」

「空中に投げ出すのを実践と!?」

「感謝しなけりゃ、また落とす。十回は確実に落とす」


 ……獅子の子の気持ちがよくわかりました。


「よし……じゃあ、町に着くまでもう少し時間あるな……。練習再開だ。さあ来い、地面に落としてやる」

「待ってッ!? 感謝してます。マジ、してます!!」

「知ってる。なら、その感謝に答えてタップリ空の飛び方教えてやる」

「お……教えるッ!?」

「まずは実践で学んでこいや!!」


「あ~~~れ~~~~」


 このあと、無事……俺は街にたどり着けました。

 本当に頑張りました。

 そして、空も飛べるようになりました。


「おっ、町が見えてきたな」

「……お……おぉ」


 見えてきた巨大な町。円状に広がる街は、いったい直径何キロに及ぶのだろうか……。とにかく、でかいことに変わりはない。


「よし、てめえは先に町行ってこい!!」


 もう……

「いいでしょ~~~~っ!?」

 最後まで俺は吹き飛ばされ、結局、ソラクジラに乗っている時間より、空をぶっ飛んでいる時間の方が長かったように思います。

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