第7話 マトVSロース
着地の衝撃で舞い上がった土煙が消えていく中、堂々と立つマト。だが、その目つきは昨日見ていたのとは明らかに違う。非常に……鋭い。
その鋭い視線をチラッと俺のほう……いや、ロースのほうを見る。だが、すぐに視線を逸らすと後ろにいるセロに体ごと向ける。
「……どこから来た?」
ロースが俺を掴む手を離さないまま、マトに問う。
対してマトは、セロに向かって歩き出し、背を向けたまま右手の人差し指を天にかざす。
「上から」
それだけ言うと、倒れるセロの横に座り込んだ。
「……よかった。息ある……。ゆっくり休んでいてください」
セロの背中をなでるとゆっくりと立ち上がる。
「そこの君? その子を離してくれないかな? うちのかわいい新人さんをこれ以上いじめるのは……やめてもらおうか」
そう言って振り向いたマトの目はもう完全に戦士が放つそれだった。
「ふっ」
ロースは鼻で笑う。
その途端、俺の体が大木に向かって思いっきり振り投げられた。
「うぁっ!?」
マトがいる場所とは反対方向。大木に向かって俺の体が突き進む。このままじゃぶち当たって……圧死!?
が、俺の体が大木にぶつかるより先、マトが俺の体を抱えた。
実に、俺が吹っ飛ぶスピードより速く回り込んでいたのだ。
マトが自身の体をクッションにして、俺の体に掛かる運動エネルギーを吸収。そのままゆっくりと俺の体を地面に下ろした。
「な……なんで……ここに?」
「ケイジが行った場所でかなり大きなエネルギーを感じたから。知ってる気配じゃなかったし。まさかと思って来たら……ね。
ごめんね、こんなことにまでなっていたなんて……」
最後、ゆっくりと俺の頭を地面に置くと、マトは立ち上がった。
「安心して……あとはあたしがあいつを倒す」
そう言って、ゆっくりとロースに向かって歩きだした。その背中が本当はケイジと対して変わらないまずなのに、やたらと大きく見えた。
「……ただ者じゃないということか……」
「そうだね……。君も目的や意図がなんなのかは知らないし、本来なら話し合いから始めるべきだと思うけど……君にやられた彼らを見たら……そんな気は失せちゃった……ごめんなさい」
そう言いながらも一歩一歩、ロースに近づいていくマト。
「奇遇だ、俺も話し合う気はない」
ロースが両手を広げると同時、背後の水の塊。両手を前に突き出すと同時、あの雨の弾丸が今度、マトに向けられた。
無数の水弾がマトを襲う。だが、そのあまたの弾をマトは難なく避け始めた。ロースに向かって歩きつつ、体を反らし避けていく。さらに足元を穿つ水弾をステップで体を回転させつつかわしていく。
だが、マトがちょうど避けたところ、さらに無数の弾丸。当たるっ!?
だが、俺がそう思った頃には、マトが右手を数度振っている。たちまち水弾はマトの体に当たることなく、霧散していった。
「攻撃は終わり? なら、今度はこっちからいくよ」
ロースが攻撃の余韻を残す中、マトが仕掛ける。最初の一撃はマトの右肘を利用したもの。強烈な衝撃はロースが取ったガードの上からも確かに届いたようで、一気に周りの木々をぬって後退させる。
「なっ!? グッ!」
ロースの反撃が始まる。最初の掌底打ちはマトが首を反らして避ける。さらに続く蹴りをマトはロースに回り込む形で避けた。
そのまま、マトがロースを一気に蹴り上げる。
吹き飛ばされたロースの体がいとも簡単に森から抜けて空を行く。そこに追撃をすべく、飛びかかるマト。グングン空中にいるロースに向かって接近。
「なめるなよ!!」
ロースが右手を振り上げ、向かってくるマトを叩き落とそうとする。だが、ロースの攻撃が当たる瞬間にマトは方向転換。ロースの右手が空振りに終わる頃、マトはロースを中心に旋回するように空を飛んでいる。
ロースが体をひねらせ、マトを視線で負いつつさらに両手を広げる。背中に広がる水が無数の弾丸となり、空を飛ぶマトを穿つため発射。
あまたの方向からマトを狙って水の軌跡を描いていく。
だが、マトは空中で幾度となく体を回したり、旋回したりしてことごとくそれを回避。さらに上昇していく。
「逃がすかよ」
ロースが上昇していくマトを捉えたらしく、さらに水の弾丸は数を増し、マトを狙う。だが……、
「消えたっ!?」
そうロースが叫んだ瞬間、いつの間にかマトはロースに急接近し蹴りを入れていた。
容赦なくロースが木々をなぎ倒し地面に激突。
俺の目には水の弾丸に当たると思った瞬間、姿が消えたかのように見えた。かと思えば、かなり距離があったはずなのに、ロースに蹴りを入れていた。
地面にクレーターを作り倒れるロースを視界に捉え続けているマトが右手を上げる。そこに出来るのは巨大な炎の玉。そのままロースめがけて振り落とした。
森に炎の隕石が衝突したような光景。直後起こる大爆発は森の木々をなぎ払い、円状に野原が広がるようになっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます