第5話 反撃の一手
ロースの拳により洞窟の中から突き上げられた俺たちは地面を飛び出し、太陽の下に晒される。
なおも、ロースの拳が容赦なく俺のはらわたを押し込み続けている。
「ほら、明るい場所に出られたな」
ロースの一言を皮切りに地面に俺とセロは振り落とされる。俺たちの体は森に生える木々の合間を縫い、地面に激突する。
ダメージがかなり入っており、素早く立つこともままならない。なんとか俺は手を地面に付け上半身を軽く起こせる。だが、セロは咳込みをしながら地面にうつぶせになっている。
「くそっ……、どうすんだよ、これ……」
「くぅ……ま……まいった……ねぇ」
必死に起き上がろうとする俺たちの前にある木の枝に着地をするロース。
「さぁ、再開といこう」
ロースが両手を広げると同時、ロースの背後に水の塊が生まれ始める……水魔法。
ロースがそのまま、両手をこちらに振ると同時、背後にある水の塊から水滴が飛び出す。それは無数の弾丸となりて俺たちを穿ち始める。
最初、地面に衝突した水の弾丸が地面をえぐり、俺たちの体を吹き飛ばす。そこに絶え間なく続く降り注がれる水の弾。俺は両手でガードを重ねるもその上から容赦なく打ち抜かれていく。
続いて飛びついてくるロースの右手が地面につきつけられる。と、同時に放たれた電撃魔法が水の弾丸によって出来た水たまりを伝い、俺たちの体を焦がそうと襲ってくる。
「やべっ!?」
流石にこれをまともにくらえば、生死に関わる一撃だと判断。何が何でも避けかければならない。
そこで思いついたのは魔法の反動。さっき、始めて放てた炎魔法の感覚を思い出し、右手にちからを込める。
そのまま地面につきつけた。
途端に発生するのは爆炎。俺の下に広がる地面が一瞬にして炎に包まれたかと思えば、俺の体はその衝撃によって生じた爆風で吹き飛ぶ。
それによって俺はロースの炎魔法の猛攻からはかろうじて避けることができた。
だが、続いてくるのはその爆風の衝撃。
俺の意思を超えた勢いで飛んでいく俺の体が容赦なく地面に打ち付けられる。衝撃はその一回で止められず、何度も体を地面に打ち付け体がグルグルに回されていく。
頭の中も内蔵もぐっちゃぐちゃに掻き回されるような感覚に陥り、世界が何十回も回転するように視界が回る。
何本のもの木々をなぎ倒しながらも、やっと大木にぶつかるという形で俺の体は停止した。
「がはっ!?」
大木に背中からぶつかった衝撃で肺に溜まった空気が血液とともに、口から吐き出される。
苦痛が体全体に広がるが、なんとか意識を保ちつつ、地面に着地した。
「うぅ……オロロロッ!!」
血が混じった胃の内容物を吐き出している頃、俺の上をなにかが擦過。続いて、俺が衝突した大木に同じように追突するセロがいた。
まるで休憩も与えられない状況に苦悶すら上げる暇なく、俺は素早く横転。すると俺がいた部分にセロが落ちてくる。
「セ……セロ……ッ!?」
「……ぐぅ……」
セロの背中に生えている羽がボロボロになり、方翼が痛々しく曲がっている。さらに、同じく血が混じった吐瀉物が地面に広がる。
「おい……ケイジ……お前……ゲホッ!? 魔法、使えなかったはずじゃ!?」
息絶え絶えにそんな質問をしてくるセロ。
「がむしゃらにやってたら……、ね……ぐぅ……」
なんとか膝を立て、態勢を立て直そうとしたが、セロは俺の前に手を出した。
「君は魔法に……集中しろ。俺が時間を稼ぐ……」
「……え!?」
セロは震える足で立ちながら俺のほうを見る。
「君の奥に秘めた力は本物……それを最大限貯めて……ぶち当てろ……それ以外に勝ち目はない……!」
こっちが返事するより先に、セロは飛び出した。だが、その直後衝撃が空中で広がる。既に俺たちの目の前にまで飛び込んできていたロースの攻撃をセロがかろうじて先に飛び出し受け止めていた。
「ガァっ!?」
吹き飛ばされるセロを一瞬目で追いかけるが、直ぐに右手に集中した。くだらないことに意識を取られる暇はない。やらなきゃ、俺たちは殺される。
「はぁぁぁ……」
体中に流れる力を右手に集中。どんどん熱がこもっていく。それは俺の手や体はもちろん、自身の肌でも存分に感じられる。
俺の頭上でセロがロースの攻撃を受け続けている。まるで反撃はできていなさそうだが、かろうじてダメージを軽減するように促しているらしい。
それもいつまでもつか……。
「ぬぅぅぅ……」
まるで分からない魔法の使い方を感覚と直感でやるだけで、いったいどこまで威力を挙げられるかは疑問だ。
でも……今はその直感を信じるしかない。
空中でバトルを繰り広げていたセロが再び地面に叩きつけられる。それに対して、追撃をかけるべく飛びついていくロース。
「くらえよ!!」
足を振り上げ、うつぶせになるセロにトドメの一撃を叩き込む動作に入るロース。
「お前こそ……、くらえよ!!」
そこを隙と見た俺は、一気に直進しロースの真後ろを取った。大きく振りかざす右手から膨大な熱が漏れていく。
「ん? にぃ……しまっ!」
ロースが首だけ後ろ似まわし驚愕の顔を浮かべる。セロは地面を横に転がる。
「だぁああああああ!!」
俺はロースの至近距離から炎魔法を打ち放つ。
「うぅぅぅぅああああああっ!?」
「はぁぁああああああああっ!!」
右手から放たれた爆炎は巨大な柱となり、天を焦がす。視界いっぱいに広がる炎はロースを簡単に包み込む。
絶え間なく爆炎を垂れ流し続ける俺の右手。やがて、俺の目の前で大爆発を起こし、ロースの体すべてを炎に包み込ませていった。
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