第4話 ロースの実力解放
少しばかり怒りをあらわにするロース。ゆっくりと床の岩に足をつけてくる。それと同時、倒れていたセロが起き上がり俺の横についた。
「き……君……本当に強いねぇ」
「……まぁ」
正直、このセロが一発で吹き飛ばされたとき、「よわっ!?」と心の片隅で思ってしまっていたことは黙っておくとしよう。
「これは……俺がいるのはかえって邪魔かねぇ?」
「どうですかね? ま、ひとまずこのまま俺は続けますよ」
俺はロースに対して再度構えを取る。するとさっきまで怒りの表情だったロースの顔に一瞬笑みが見えた。
「がっ!?」
次の瞬間、吹っ飛んでいくセロの姿が見えた。
いな、飛ばされたのは俺。ロースの肘打ちをくらった俺は吹き飛ばされ、セロから距離が離れていく。そのまま、俺の体は洞窟の壁へと打ち付けられた。
間髪入れず襲ってくるロースに対し、俺は素早く体を起こし、壁をける。と同時、けったところをロースの拳が追突。大きな衝撃が生まれ、洞窟を揺るがす。
なんとか避けられた俺はロースと距離を取るべく、バックステップの動作に移行しようとするが、視界に広がるロースの顔面。
計り知れない衝撃が俺の体に埋め込まれ、たちまち洞窟の床が陥没する勢いで俺の体は埋め込まれた。
「ぐっ……クソ……」
体に痛みがあるが、そんなこと言っていられない。全力で体を持ち上げる。そんな俺の前を悠々と歩くロースの姿に目に入る。
「俺の一発で沈んだあの鳥が逃げろと促した猿だ。正直、雑魚だと思っていた。だが……どうやらお前の方が遥かに強いらしい。
はっきり言えば、お前の力を舐めきっていたということだ。それを謝罪する意味も込めて、実力を解放することにした」
ロースは右手を軽く天井にかざす。
「喜べ」
そのセリフと同時に、ロースの力が解放された。途方もない熱と風圧が俺の体を押してくる。その凄まじさは間違いなくダーカス以上。
冗談じゃない……なんだよ、この凄まじいまでも圧力!?
さっき起こった一瞬の攻防とこの圧力で俺は悟れた。どう考えても、相手はバケモノ……!
「はい、残念っ!!」
刹那、ロースの背後にいたセロが不意打ちの蹴りを放つ。だが、ロースはなんでもないように、セロの足を掴み攻撃を止めた。
「攻撃のタイミングはお見事だ。だが、残念なのはお前のほうだな?」
ロースの意識がセロに向けられようとした瞬間、今度は俺が突き進み拳を穿つ。だが、それすらロースは足の裏で簡単に受け止める。
虚しく、俺が生み出した攻撃のエネルギーはその足で吸収される形に。
「ふっ、お前は力こそあるが、攻撃の鋭さが足りないな」
「ケイジ! 同時だ! 畳み掛けろ!!」
「くっそが!!」
セロの合図とともに、俺とセロ同時に再度、攻撃をロースに向かって繰り出していく。
だが、ことごとく俺たちの攻撃は避けられたり受け流されたりするばかり。ダメージなどまるで蓄積されていかない。
「おそいな。それに攻撃の場所がまるでなってない」
ロースの反撃をまともにくらった俺とセロが地面にうつぶせになる。
「鳥のほうはまだ戦い方はまともだが、そもそもが弱い。猿のほうは、力こそあっても戦い方がなってないらしいな」
俺はロースの言葉を無視し、立ち上がりひとり攻撃を続ける。だが、やはり攻撃は当たることがない。
「お前……目でしか俺を捉えていないのか? この暗い場所それは、あまりに悪手な戦闘方法だな」
俺の攻撃の合間を縫い、飛んでくるロースの右腕。それは俺の頭を強引につかみとり、俺の頭を壁に叩きつけた。
「グゥッ!?」
視界に飛び散る岩の破片と、壁に掛かっている松明が目に映る。
「ほら、光が近くにあるぞ。これで俺の顔もよく見えるだろう、よかったな」
ロースはそのキツネ顔を近づけてきたかと、思えば俺の顔は松明のほうに向かっていく。壁を俺の顔で削りながら松明に激突。
松明の炎ごと巻き込まれた俺の体は容赦なく、地面に叩きつけられる。
「おい、ケイジ!」
壁に再度激突するかというとき、セロが俺の後ろに回り込んできて、俺の体を受け止めてくれる。
かろうじて俺は追加ダメージを免れた。
だが、状況は変わらない。いくらなんでも、このコウモリ野郎が強すぎる……。こっちだって、今の俺にできる全力で力を解放しているのにまるで歯が立たない。セロと俺の二人がかりでも……。
「ほら、どうした? 戦意を失ったか?」
ロースが淡々と近づいてくる。ゆっくりと、その足音ひとつひとつがしっかりと耳に残るスピード。
「おっ! そうだ、この暗い環境でうまく戦えていないのであろう猿くんにひとつサービスをしてやろう」
「……サービス?」
猿とはおそらく俺のこと。だが、サービスがまともなサービスであるはずがない。俺はなにかくる合図だと防御できる態勢に入る。
「そうだ、太陽に下に……でるとするか」
次の瞬間、俺とセロの体がロースの拳により突き上げられた。そのまま天井の岩に激突。だが、そこで終わることはなく、むしろ勢いを増しながら、俺たちの体が岩や土を押し上げていく。
「グゥゥゥゥッ!?」
「ウァァァァッ!?」
どんどん土と岩の塊に押し込まれていく。しかも、ロースの拳は圧力をどんどんまして行き、俺の体が容赦ない衝撃に悲鳴を上げる。
だが、それも終わる。気が付けば、俺たちの体は地面を突き抜け、太陽の光が視界を強く照らし出していた。
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