乱入者を撃退するよ

第1話 初ミッション

 翌日、俺は空にいた。

 いや、マジでマジで。


 詳しく言えば、翼を生やした白に近い白の馬にまたがって、空を飛んでいた。そう、いわゆる天馬、ペガサスに乗っている。と言っても、翼はよくイメージする羽毛の翼ではなく、コウモリのような翼だったので、見た瞬間唖然としたが。


 しかも、あの人鳥種、セロと二人乗りである。


「あの……、本当に昨日の今日で仕事いくんすか、俺?」

 俺の問に対し前に座るセロが背を向けたまま答える。

「ん~? まあ、そうらしいねぇ」


今朝、俺は叩き起こされたと思ったら、ダーカスに頭掴まれ言われた。

「よし、仕事だ。セロについて行ってこい! でなきゃ、指折る」


 マジであの有無言わさないアレはやばい。語彙力ないがやばいんだよ、あれは。うん。分かりやすくいえば、例えまったく身に覚えがないことでも、平謝りするしかないような勢いのあれだ。


「まあ、でも安心しろ。ただの採取ミッションだからねぇ。一日で帰れるし、死ぬこたぁねぇさ、多分」

「多分!?」

「お前は黙って見てればいいんじゃないかな~。俺がサクッと終わらせるところを見て仕事を覚えればいいって事だろうねぇ」


 セロは少しのんびりした口調でそんなことを言う。そう言われたら、黙ってついて行くしかあるまいと腹をくくる俺だった。


 やがてペガサスが降下しはじめた。どうやら目的の場所に付いたらしい。地面にたどり着くと、目の前には洞窟が広がっていた。


「ほら、降りようぜぇ」

 そう言われ、ペガサスから降り地面に足をつける。セロ降りると、手綱を近くの木に括り付けた。

「しばらくここで待っててよぅ」


 セロはペガサスの喉や頭を撫でつつ持っていた干し草をあげている。さらには「ほら、お前もなぁ」と言って干し草を渡してくれた。


「動物との付き合いは大切だからねぇ」

 ……多分良いこと言ってんだろう。だが……昨日「とどめ!」とか言って壁にめり込んだゴブリンを楽しそうに殴った奴台詞とは思えねえな。


 まあ、でもペガサス餌をやっておいた。


 そんで松明を片手に洞窟の中へと入っていく。


「団収入源は主に依頼の報酬だねぇ。でも、それだけじゃあ足りないこともあるから、採取し売ったりしてる。

 因みにこの洞窟はゲルプイーグル団の所有地だからねぇ」


 そう言っていると、いくつかの分かれ道のあと、無効に鈍い青色の光が見えてきた。そのままセロは向かう。

 やがて、その光の発生源場所にたどり着いた。


 周りの壁部分が所々青く光っている。その光によってここドーム型になっているのが分かった。


「こ、これは?」

「鉱石の一つだねぇ。プシケっつう魔法生物の一種がやどった鉱石だねぇ」

「魔法生物? なんです、それ?」


 俺の質問に対しセロはじっと俺のほうを見る。

「説明するとながいねぇ。この章の終わりに予定されてるコラムでも、後で確認すると良いよぉ」

「……何の話?」


 セロはこっちの疑問を無視するように、松明を持つ手を上に挙げた。するとセロから熱が帯び始める。それに合わせ松明の火が踊り始めた。

 やがて炎が複数の方向に飛び散る。かと思えば、あたりの壁にあった灯籠次から次へと着火。洞窟全体が照らされた。


「すっげ……それも魔法ですか?」

「まあねぇ」


 明かりがついたことでこの洞窟の壁にいくつもの穴があるのを確認した。

「あの穴は?」

「採掘のあとだねぇ」


 なるほど、と思いつつも別の疑問が出て来る。


「ってか、なんでこの洞窟、団の個人持ちなんです? 採掘専門の人に売るとかしたほうがいいような気も……」

「それは……あれが住み着いて居るからだねえ」


 そう言ってセロが指さす先に、オオカミみたいな動物が何体も採掘の穴から這い出てきた。オオカミは喉を鳴らしてこちらに威嚇をはかっている。



「ブレアルクジャッカル。こいつが居て危険なもんでうれないんだよねぇ」

「って、ことは……これを討伐に?」


 だが、セロは首を横に振った。

「まさかぁ、別にこいつらは家畜を荒らすわけでもないんだよぉ。近くに人もいないしねぇ。人間に危害を加えない動物の命を取る気はないさぁ」


 以外な返答に少し戸惑った。

「でも、これはどうするんです?」

「無視して近づかなければいい。敵意がないと分かれば必要以上に襲ってこない種なんだねえ」


 そう言ってブレアルクジャッカル近づかないように採掘の穴へと向かっていく。その後を俺もついて行く。

 すると、確かにブレアルクジャッカルは襲ってくる様子は見せなかった。


「ブレアルクジャッカルは一般的な動物と同じで人間を怖がる。でも、あの個体たちは怖がれど、こっちが危害を加えないことをわかっているのか、特に逃げることもなく住み家にして居るみたいだねぇ」


 なんて説明を聞くなか、セロが指を一本立てた。

「必要以上に生き物を殺さない。それが内の団のモットーなんだよねぇ。覚えといてよぉ」

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