第3話 チート無双
ざっと見たところ、ゴブリンは二十頭ほど。ある程度の社会性を持っている生き物らしいことはよくわかった。
「これ……どうなんだろう……行けるのか?」
自分の実力もイマイチ分からないから、これが果たしてやばい状況なのかどうかも分からん。だが、数という面では明らかに振りだろう。普通に考えたら、どれだけ実力差があっても一対三はかなり厳しいと聞く。
「……やっぱ、まずくないか?」
そんな思考していると、ゴブリンのうち一頭がこちらに向かって攻撃を仕掛けてきた、それを皮切りに次から次へとこっちにゴブリンたちが向かってくる。
最初のゴブリンの攻撃を避けつつ、右ストレート。右手に熱いものを感じつつ放たれた一撃は容赦なくゴブリンの頭蓋骨を殴り潰した。
続いて、背中に襲ってくる二頭目のゴブリンに対して、回し蹴りを披露。ゴブリンの腕ごと砕かれたゴブリンの体が地面に打ち付けられる。
が、快進撃はそこまでだった。俺が攻撃を行っていた隙を見つけてきた二頭のゴブリンが俺の両腕をがっちりつかみにかかる。
振りほどこうと両手に力を入れようと思ったが、それよりも先に、三頭目のゴブリンが俺の腹に攻撃をぶち込んできた。
「ガッ!?」
さらに、後頭部から別のゴブリンの攻撃がヒット。思わず視界が揺れる。
だが……。
「攻撃力は大したことねえな!」
両腕を掴んでくるゴブリンを強引に振りほどき、同時に頭を鷲掴み。勢いよく二頭同時にゴブリンの顔面を地面に叩きつけた。
「おぉぉら!!」
さらに、ゴブリンの頭を掴んだまま、振り回す。
こっちに向かってくるゴブリンに対して、掴んでいるゴブリンを投げて押し返しつつ、背後を取ろうとするゴブリンを叩き落とす。
態勢を崩すゴブリンを踏み台にして跳躍しつつ、奥に居るゴブリンに渾身のパンチを叩き込んだ。
頭もろとも吹き飛んでいくゴブリンとさよならしつつ、群れの囲いから抜け出すことに成功した。
「思った以上にいけそうだな。おら、全員まとめてかかってこいよ」
なんてこっちが言いきらずとも、向こうから全員まとめてかかってきてくれた。残りおよそ十頭。そいつらを数頭ずつ、引き寄せながら着実に数を減らしていった。
「さてと……ラストだな」
遂に残った一頭に対して、右肩をグルグルと回す。対する残ったゴブリンは声を荒らげ、牙を剥き出しにして威嚇を続けている。だが、それとはよそに、俺が近づくにつれて後ろに下がっていく。
やがて、ゴブリンは牙をしまい、口を閉じる。かと思えば、くるりと俺に対して背を向けゆっくりと歩き始めた。
「……なんだ? 逃げるのか? ……まあ、それもそうか」
戦意を喪失したらしいゴブリンの背中をしばらく見ていたが、必要以上に負う必要もないだろうと俺もまた背中を向けた。
刹那だった。
「はっ!?」
背筋にとんでもない悪寒が走る。それに合わせて振り向くと、再び牙を剥き出しにしたゴブリンが今にも俺の頭をかち割らんと石を両手に持ち、振りかぶっていた。ゴブリンの踏み込みが容赦なく俺との間合いを詰めていく。
「ぅ……ぅゎわああ!?」
俺がとっさの判断で下した選択はがむしゃらな攻撃。ターゲットをろくに見もせず放った裏拳のような一撃。
その命の危機すら一瞬感じたとっさの一撃は確かにその右手を熱くした。遅かなことに目すら閉じてしまった俺の耳に「ボンッ!」とでも言うような音が響く。
頭にくる衝撃を覚悟していたが、それはなかった。
代わりに少し離れた地面に何かが落ちる音、そして、近くでも何かが倒れる音。
ゆっくりと目を開けるとそこには、首から上を完全に失ったゴブリンの体が転がっていた。辺りを見渡すと、ゴブリンが持っていた石が少し離れたところに転がっている。
そして、恐る恐る右手を見ると、そこには赤い液体がべっとりとくっついていた。
「あ……あた……あたっ……あたまが……ふき……ふきっ……うっ」
…………。
「オロロロロッ!!」
吐いた。
盛大に胃の中身を地面に吐き散らしたあと、この世界に来て始めて起きた息切れと共に、地面へとへたりこんだ。極力右手には意識を向けないまま。
「ハァ……ハァ……、ま、まあ……気を失わなかっただけ良しとするか……うん……。にしても……」
しっかり見るとまたゲロ吐くのは必至なので、背景を見るような流し目で物を見る。
「ガッツリ動物殺してしまったよな……。嫌ってほど、リアルに殺したよな……本当に俺が……命をオロロロロロッ!? 消してしまった」
なんか考えれば考えるほどさっきの感覚が蘇って、胸がえぐいことになる。なので、完全な人間のエゴであるが、これ以上意識しないことにした。
「動物愛護団体に怒られたり……しないよな?」
にしても……動物が騙し討ちをしてくるとはな。随分と知能が高いらしい……チンパンジーの上をいくんじゃないだろうか。ていうか、あそこまで露骨に人間に戦意を向けてくる動物って時点でやばい。
「さすが異世界……レベルが違うな」
なんて、関心している時だった。
「オォラァ! ゲルプイーグル団参上! 俺たちが来たからにはもう安心だぁ……あれぇえ?」
「……もう安心しているみたいですね」
「用済みだねぇ」
なんか来た。
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