第2話 力の使い方
ダメージは追っているみたいだが、まだ立ち上がるゴブリン。一応、俺なりに本気で攻撃をしたんだが倒しきれていなかったみたいだな。
「ギィィィ……」
牙を抜き出しにして喉を鳴らしてくるゴブリン。
「あらぁ、これ完全にプッツンきてるな。そうとうお怒……っ」
油断していたその瞬間、口が強引に閉じられてしまった。右頬に衝撃が走っていることに遅れて気がついた。それがゴブリンによる攻撃だと理解するのにはさらに時間を有した。
「グッ!?」
衝撃に耐えるために、足に踏ん張りを効かせつつ、目の前にいるゴブリンに視線を送る。なんとかカウンターをかけようと、右手を使って攻撃を行うが、それは軽く避けられる。そのまま、更なる一撃が俺の腹に走った。
ゴブリンの緑の右手が俺の腹にヒット。思わず前のめりになる俺の背中にゴブリンの追い打ちが決まり、完全に地面に這いつくばる形になる。
「クソッ、なんだよ!?」
だが、ゴブリンの技をくらったはずなのに、体にそこまでの痛みがないことに気がついた。ならば、今そのことを必要以上に考える必要はない。すぐさま続いてくるゴブリンの攻撃に意識を向ける。
すると見えたのは払うように繰り出されるゴブリンの右足。それをとっさの判断で体をはね上げて交わす。
続いてくるゴブリンの攻撃を避けるべく後ろに跳躍をはかる。
その勢いを殺さないまま、自分でも驚く程綺麗なバク転を二回かましゴブリンと間合いをとった。
「ギィィィイイ」
向こうもさぞかしイラついているよう。
「やはり、すばしっこさ、スピードはあるみたいだが、攻撃力はイマイチらしいな。もっとも、俺もそういうタイプである可能性が出てきるのは、かなり癪なんだが」
そう言いながらも、今度は俺から接近。踏み込みの勢いをできる限り載せた蹴りの一撃をゴブリンに叩き込む。バランスを崩すゴブリンに対し掌底打ちをかまし、地面に叩きつける攻撃を放つ。
対してゴブリンは受身を取ったかと思えば、そのまま蹴り上げる一撃を俺に向かって放ってきた。
それを顔だけ右に動かし避けつつ、さらに蹴りを放つ。その蹴り技は確かに入り、ゴブリンを数メートル吹き飛ばすが、やはり、立ち上がってくる。
「どうも決定打に欠けるな……らちがあかないぞ……」
こっちがやられることはなさそうだが、ゴブリンを倒すこともこのままではできなさそう。どうしたものか、そう思っているときだった。
「キャァアアア!?」
今戦っているゴブリンのさらに向こう側で腰を抜かしている人たちの叫び声。しかも、その先には別のゴブリンが今にも襲おうと近づいていた。
「あ、あいつら……俺が戦ってる間にさっさと逃げとけよ……って、腰抜かしてたのか……。ああ、もうちきしょう!」
なりふり構っていられない。一気に突進にかかった。
さっきまで戦っていたゴブリンがこっちに向かって攻撃を仕掛けようとするが、体をひねりながらさっさと避けると、さらに前進を続ける。
もう一頭のゴブリンが右手を振り上げ、爪を立てる。
「させねぇぇぞ!」
さらに一歩ぐっと踏み込み加速をかける。そのまま右足を利用した飛び蹴りの動作に入った。その時、右足になにか熱い物を感じたが、そんな余裕はない。とにかく、その一撃をもう一頭のゴブリンに放った。
その刹那、「ゴッ!」とでも表現するような衝撃音。今までの俺が行っていた攻撃とは明らかに違う音と衝撃がゴブリンに入る。
という感覚を覚えた時には、そのゴブリンはものすごいスピードで彼方へ吹っ飛んでいった。遠くの方で地面をえぐりながら最後、岩に突っ込む。
そして思い出したかのように崩れる岩。
「……えぇ……なんかアホみたいな威力出たんですけど……でも」
自分の蹴りに秘められた真のパワーとでも言うべき威力に引き攣りを覚えつつも、最初に戦っていたゴブリンにターゲットを戻した。
「どうやら、チート能力をもらったことは本当だったらしいな。あとは使い方の問題らしい」
そのまま、ゆっく
りとゴブリンの方に足を進める。
「さて……と、さっきの感覚忘れないまま、いきますか」
右足で地面を一気に踏み込む。俺が元いた場所には踏み込みで生じた衝撃が土埃に変わり空を舞う。その土埃が広がる頃には、ゴブリンに強烈な蹴りを叩き込んでいた。
その攻撃を受けたゴブリンは吹っ飛び、今度は近くにある町を囲んでいる壁に激突。なんか、誰かに怒られそうな感じもするが、ゴブリンはその壁にめり込み、貼り付け状態になって落ち着いた。
「さてっと、これで終了だ……ぁあ……と見せかけて……」
気が付けば、俺の周りにゴブリンの集団が集まっていた。
「あの……ゴブリンさんって、群れで暮らす方々だったんですね……? え? マジ!?」
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