第23話 燃えつきる

「あの満理花さん、携帯貸してくれませんか。僕の通信が止められてるんです」

気前よく貸してくれたそれで、実家に電話をした。

「もしもし、水狐です」

「えっ、兄ちゃん? わざわざ電話するとか、そっちに警察が行ったん?」

「いや、あの、家が泥棒に入られちゃってさ、それでお金とか色々無くなっちゃって少しでいいから振り込んでほしいなと」

「え、そっちも? うわぁ、怖い怖いって。こっちも空き巣にあって、とくに兄ちゃんの部屋から入ったみたいで滅茶苦茶になってるねんけど」

「そうか。まぁしゃあないな。他に盗まれたのとかある? 大丈夫?」

「いや、えっと、たぶん大丈夫。それに殺人犯がいるかもってことでパトロールみたいなのも多いからさ」

「は? 何それ」

「いや、兄ちゃんの友達やんか。あの雪治さんやったっけ、その実家の周りにずっと警察がおる感じ。ごちゃごちゃした南米の置物とか変な外国のオブジェみたいなん、テレビにも映ってたやろ?」



燃えた後の家をはじめてみた。坂井家はむき出しの柱や鉄筋でぐちゃぐちゃになり、雨ざらしになったためか異臭もひどい。

「私が一緒でいいんですか」

「美愛ちゃんなら、何とかできるでしょ」

すると美愛ちゃんは僕の懐から財布をとり、さきほど実家から恵んでもらった札を2枚とも抜き取った。そしてズカズカと敷地に踏み入った。警察は僕たちに気がつかない。

「あぁ、水狐くんなら来てくれると信じてましたよ。お隣の子は恋人かな。すごく若いね」

石像が口を開いてフランクに語りかける。そしてかつてリビングだったとおぼしきところの焼け残った椅子に座るよう指示した。

「そう若い。全然恋人じゃないよ」

美愛ちゃんが脇腹を殴る。そしてリンリンちゃんが嘆息する。煤や埃や土でざらざらした椅子である。天井が崩れ落ちて灰塵が光に照らされてよく見える。

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