第22話 燃えつきる

「えっ、空き巣に入られたんですか?」

「そう。仕事終わって家に帰ったらグッチャグチャだったわけ」

満理花さんにお金を貰おうとガールズバーに行けば、今日は急に休みをとったという。泥棒に入られた日に仕事は手につかないとのことだった。彼女と落ち合い、一緒に晩飯を食べることにした。

「驚いた。あんたもねぇ。絶対怪しいでしょ、これ」

「そうですね。少なくとも僕たちの知人がやったとしか思えないですね」

ウーロン茶を飲む。油っこい肉を頬張る。焼肉のたれがなくとも旨い肉だ。

「オカルト研究会の出番じゃないですか? 水狐さん」

「僕らはそんな少年探偵団みたいなことはしてなかったよ」

「そうそう、主にこいつが嫌な目に遇うだけ。それに二人とも部屋を荒らされただけとはいえ、あまり関わりたくないし」タバコの煙をはく。「何するか分かんないでしょ、犯人」

リンリンちゃんはもっとモツを喰わせろと要求してくる。

肉を食べようとしても、そぞろになる。すると辺りに嫌な集団がぞろぞろいることばかりに目がいく。母親だけが赤ん坊の世話をしていた。店員に無理な要求をしていた。国旗を指差し大きな声で侮辱していた。酔って卑猥で品性のないかいわを交わしていた。満理花さんの言う何をするかわからんやつが多すぎる。

「とにかく、目立った被害がなくてよかったですよ」

「それなんやけどさ、まぁ、うちは盗られたのがあってさ。んで、身内の仕業ってことに気ぃついてんけどさ。

オカ研の会誌、家にあったぶん全部なくなってた」

「あんなの誰がいるんですか」

「まぁそうやねんけどさ。ただ、辛いなっておもって」

珍しく満理花さんが感傷に浸るから、僕も大事な何か、補うことのできないものを喪失した気にさせられた。

「僕は実家に置いてましたし、よければ全部あげますよ」

「いやいいよ。縁が切れたんやと思っとくから」

盗人は金品に目配せをせず、本棚にあった会誌だけを盗んでいったようだ。もしかしたらと、梶に連絡したが通じない。彼の家にも侵入者がいるかもしれないし、彼が犯人かもしれない。

まぁ、梶が犯人なら僕の部屋に何度も来たことがあるため、僕の部屋に会誌があることなんて知っているだろう。

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