1-1 SF-15
『アルファワン、ケツについた敵機を追い払ってくれ!』
味方機から要請が来た。
急速反転し、敵機のケツについた。ロックオン表示が重なる。PXプラズマライフルを撃つ。
青白い閃光が連射されて、敵機に直撃した。フォーミュラが炎上し、直後大爆発を起こした。
『何だ、あのフ〇ック野郎!? カミカゼ仕様か!?』
難を逃れた味方機が喚いている。どう見ても爆発の規模が大き過ぎる。
「各機、敵機に特攻仕様の機体が含まれていると想定される。撃墜時に注意せよ」
俺が通信すると、間を置かずにジュリアンが味方各機に通信した。
『一機も撃ち漏らすな! もしあれがホワイトハウスに直撃したら、俺たちの負けだ! 分かるな?』
それで戦場の雰囲気ががらりと変わった。
緊張感で張り詰めて、まるで破裂寸前の風船のようだ。明らかに積極性が変わったからか、敵機の行動が変わり始めた。
戦闘を避けて、北に進路を取ろうしている。
『アルファ、ブラボー、チャーリー、敵機を追撃しろ! 残りは残存戦力の掃討だ! ガッツを見せろ!』
ジュリアンが指示を出し、こちらに接近する。プライベートチャンネルで通信してきた。
『キセ、
「了解」
SF‐15。
スターイーグルの愛称で呼ばれる予定の機体。アメリカでの制式採用を他機種と競うために二十三機がアメリカに持ち込まれている。
この戦場に投入されたのはその内の二十一機だ。残る二機はコーラス本社で性能評価試験に回されていると聞いたが、日本の分家で生まれた子が本家に招かれるとは、運命を感じざるを得ない。
ちなみにSFとはスターフォーミュラを意味する。宇宙での運用も可能とする本機のポテンシャルにアメリカ軍は注目している。
ジュリアンが、こちらから少し離れる。二機で一気に加速して、超音速並走飛行に入った。
『敵機は三十六機。扇状に広がりつつあります』
ウィンドウの映像に赤い点が三十六。北上しながら広がっていく。このままバラバラにワシントンDCを目指すつもりだろう。
一機でもホワイトハウスに辿り着ければ、キングダムの力を世界に示せる。
これは政治的な駆け引きで起こるニンゲンのテロリズムではない。ニンゲンとホシビトの互いの意地を掛けた、戦争だ。
ルールは一つ。勝った者が全てを決める。中世の政治がそうであったように、我々もまた同じ道を歩んでいる。
『敵機が加速を掛けています。味方機との間隔が徐々に開いています』
FATAが言う通り、レーダーもそう示している。まだSF‐15に慣れていない米軍のホシビトたちでは酷な話だ。やはりジュリアンの言った通り、ここは俺が行くしかない。
「アルファワン、単独先行する」
更に加速を掛ける。ライトギアの形状が変化する。先端の尖った矢じりのような高速飛行形態だ。
『ハイパークルーズモード』
揃ってフォーミュラも変形する。ライトギアとラインを揃えた尖ったシルエット。ブースターが立ち上がって、極超音速飛行へと準備する。
『加速』
瞬間、身体がぶっ飛んだ。意識が過去に置いて行かれるような猛烈な加速が掛かり、もう目の前に敵機が見えてきてしまった。
『スターダストマイン投下』
敵機を追い越す瞬間に、機体の後部投射口より光の粒子が無数に投下される。直後、敵機が炎上を始め、大爆発を起こした。
あれはライトギアの装甲であるスターダストのカスだ。極高温状態で数十秒燃焼する性質があり、主に機雷として使用出来る。
目に見え難いのと、低コストで広域に散布出来るのが利点だが、味方機を巻き込むリスクがあるため、使用する場面は限られる。
『敵機残り三十。攻撃の最適解を提案します』
FATAがコースを指示してくる。そのコースに乗る。
全機落とすしかない。東京キングダムでの借りを返すには、ちょうどいい仕事だろう。
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