2-8 帰還

 氷の上に立っている。今から烈風を放つ。

 神が瞬く間。動作終了。


 マッハ十五を超える気の刃が、海を割った。


 摩擦で蒸発する海水、湯気が立ち昇る。左右に起こった波が揺り戻しで、海の傷口を塞いでいく。


 押し寄せる波で氷の足場が崩れる前に、俺は崖に飛び上がった。技の出来栄えを見定める。


「未完か……」


 致し方ない事だった。こればかりは何年も数をこなして、熟練するしかない。


「帰らなきゃ……」


 先日、一報が入った。世界各地で起こっていたホシビトの権利拡大運動がいよいよ本格化した、らしい。


 マイアミ、ソチ、上海、パリ、ニューデリー、ロンドン、ベイルート、東京、柱のある都市がホシビトたちの王国となった、らしい。


 それぞれがキングダムを名乗り、八人の王が治める特区となった、らしい。


 東京キングダム。にわかに信じられない話だが、日本に国が一つ増えた。


 そこからは、恐らく果てしない闘争、国盗りを主題とした戦絵巻が延々と続いていく。


 俺には帰還命令が下りている。キングダムとやり合うために、一戦力として参加せよ、との事だった。


 果たして、同胞と戦う事になったとして、俺は覚悟出来るだろうか? 俺は同胞を殺せるだろうか?


 この八火殻の刀の真価は――。


 虹色の刀身を眺め、その行く末を占う。


 ――光が見える。


 何を示す光か……確かめに戻らなければ。


 東京――キングダムとなった戦場に答えを求めて。

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