第96話 その道は沼
公式の討伐イベントをススキノ界攻略計画にプレイヤー誘致策として盛り込んでお役所に根回ししたり、半ば強制的に佐藤女史の詠唱短縮のお手伝いをさせられたり、冒険者ギルドの組織作りをしたりとバタバタと忙しなく動いているうちに討伐イベントまで残り1週間。
どの界ではどの敵が出ていくらになるなどの情報が錯綜し、プレイヤー界隈では討伐イベントが盛り上がりを見せていた。
その中でも、創成イースト界では即時電子マネー換金がセンセーショナルな噂となり、全国的にも有名なプレイヤー達が出稼ぎにやってくる見込みとなっている。
……噂の出所は
モモカも激流に押し流されるかのように冒険者ギルドからの融資を受け入れ、即時換金の公式アナウンスをし、仕切りは冒険者ギルドが行うこととなった。
冒険者ギルドが立て替えて先払いするからモモカに入金されたらそのまま返してねの形だ。
先立つ原資は冒険者ギルドにもなかったので銀行に借りに行った。貸すのに借りるとはこれいかにと思いつつも役所絡みの入金は遅いので致し方なかったりする。
ここしばらくは、仕事の合間に近くの獄岩石を魔法連射で瞬殺する3分ハンティングしかできていないため、ステータスもMPくらいしか伸ばせていない。その他は
―STATUS―
Name: さいとー
HP: 150 / 150
MP: 300 / 300
LC: 90
EP: 47285
「さ、さいとーさんっ! 鍛冶場が! 鍛冶場ができました!」
餃子バーの屋根裏でPCに向かっていると向かいで座っていたモモカが突然声を上げた。
遂にできたのだ。
あの……界の主が建設現場で延々とEPを込め続けないと出来上がらないというトンデモ施設が。
「よくやってくれた! お疲れ様!」
「はいっ! ようやくできました!」
感激のあまり涙目になるモモカだが気持ちも分かる。
一基あたり24時間ってなんやねん。
鍛治作業も時間拘束されるから一基じゃ足りないだろうから三基同時建築でってはい50時間ってなんやねん。
累計50時間ちょっと。モモカは1週間ばかりを動かずにボタンを押す苦行に費やした。
「これで装備も改良できる。イベントもススキノ界攻略も大きく前進する!」
「はいっ。はい! 頑張りました!」
これで使い途がほとんどなかった素材系ドロップアイテムにも価値がでてくる。鍛治作業もやり続ける類いの苦行で不人気なのだそうだが鍛冶場があるかないかで大きく異なる。
産みの苦しみを乗り越え、眩しい笑顔のモモカを主とする創成イースト界は更に一歩前進したのだった。
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