第80話 人生いろいろ


 追加で頼んだ餃子をもさもさと食べていた。バーボンのボトルも空いてしまったからもう一本入れた。



 あれから、メイド喫茶組のロリ眼鏡モモカと性別不詳カオルさんがやってきたので佐藤女史を紹介したり、先日撮っていた詠唱短縮動画で公開処刑にあったり、ヒマーとやってきたルイさんにボトルを空けられたりしていたのだが、いよいよ空気が怪しい。


「男性の魅力は顔や金ではありません。人生のパートナーとしてともに歩んでいけるかどうかの方が重要かと」


 年齢が32歳であることが発覚した佐藤女史のどこか悟った顔の含蓄ある言葉を皮切りに始まった女子会トーク。

 これは居たたまれない。国家公務員の余裕も見え隠れしている。北海道の中小企業社員や非正規雇用は東京と比べれば収入が低く「まずは金」が現実なのではないだろうか。


「どーせ。みんな浮気するしね!」

「そうですね。男も女も」

「「えっ」」


 余程、浮気に嫌な思い出があるのか浮気しないことを前提としてあげたルイさんに対し、堂々と女もだと宣ってしまう佐藤女史。驚きの声をあげたのはルイさんとモモカだ。そういう話はモモカにはまだ早いのではなかろうか。


「地元の知り合い達はほとんど結婚してしまいましたが、浮気が多いですね。男も女も」


「ええぇ。何でぇ?」


「基本がレスなんですよ。凄く多いんです」


「ええぇー」

「ひゃぁー」


「私は遊びなら遊びだと相手方にも同意が取れていればいいと思っています。お互いに」


 明け透けである。これは変な話題を振られる前に撤退すべきである。


「変に独占欲を拗らせて雁字搦めに縛られるのも嫌ですよね? 斉藤さん」


「は、はぁ」


「私は性欲が強い方ですので、レスは嫌なのです」


「さいですか」


 オープンマインド! こう見えてフレンズがたくさんいるのだろうか。

 ルイさんのじとりとした視線がゆっくりとこちらを捉え、回避不可であった。


「サイトーさんは浮気しないよね?」


 浮気するしないというか、浮気する前提や甲斐性が欠落していてそもそも浮気を考える余地がないんですが。


「サイトーさんは浮気しません!」


 モモカの謎の信頼感。俺の何を知っているのだ君は。



「どうなんですかねカオルさん?」

「私も性欲強い」


 しまった。戦闘中ではないので盾役は期待できなかった。多分あっちの盾役もこの話題では期待度低い。


「マ......マスターは?」


「俺? 俺は日本人は無理だなー」


 明後日の方向に飛んで行った。意味わからん。


「......自分は性欲薄めというか、あまり求めないようにしているというか」


「残念ですね」


 侮蔑の視線を向けられているように感じるのは気のせいだろうか。具体的には佐藤女史とカオルさんから。ルイさんとモモカからは生温かい視線を感じる気がする。

 ......というか、この酔っているようにも見えない雰囲気で記憶なくなっていたらただのトラブルメーカーなのでは......だから左遷されてきたのか。


「人生いろいろですね」


 ぼそりとこぼしたモモカの呟きに完全に同意である。



 ちなみに、モモカは界主になったためトンデモステータスになっていた。装備を整えるために鍛冶施設やNPC商人をイースト界に随時設置していくそうな。

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