第71話 イースト攻略開始


 昨晩は、酔いに任せて諸々もろもろをマスターに愚痴りつつ、他のお客さんと下世話でテキトーな下ネタで盛り上がり意識自体も有耶無耶うやむやになりながら歩いてすぐのホテルに戻った。



「……Awesome!」


 湯船に浸かると思わずネトゲで覚えたスラングが漏れる。


 寝起き直後に顔を洗うように大浴場を満喫できる環境は、やはり控えめに言っても最高だ。


 ちなみに俺の英語っぽいものは大体MMO RPG重度廃人時代人生で一番輝いていた時期パーティメンバー外国人仲間から学んだものだ。


 サウナを経由して、今日のイースト攻略戦に向けて水風呂で心頭滅却を行う。首まで浸かると、冷水が上がった体温と血潮を心地よく鎮めていく。


 朝一でルイさんリーダーから来ていた同報メッセージによると、念のためいつもの創成川公園ではなく住宅街にある新渡戸稲造記念公園で午後から攻略戦を行うようだ。


 俺はミスが許されない唯一の魔法使いという立場だ。集中して臨まなければならない。しかしながら、まだまだ時間的余裕はある。


 再びサウナに舞い戻り、数ターンをこなした。



◆◆◆



 若干、暇を持て余していたのでドーリで即時回復アイテムなどを購入しつつ、指定された時間の30分前に新渡戸稲造記念公園に到着した。


 火球ファイアボールの詠唱破棄獲得もホテル室内で試してみたが、中級エリアのイーストでは敵を引き寄せてしまう上に、接敵前に倒し切れず危険度が高くなってしまい断念した。

 検証する拠点は初級エリアの方が向いていそうだ。


「おはようございます」


「おはよーッス」

「おはよう」


 公園では、何度かドーリでパーティに混ぜてもらった顔見知りのサポートの人達とカオルさんが談笑していた。


 真昼間の公園で大人達が談笑しているのは全然健全に見えないのはなぜだろう。後、カオルさんは口数が少ない割に謎に顔が広い。


 そんな不健全風の輪の中に入れてもらうことしばし。5分前には全員が揃い、リーダーの珍しくバッチリメイクでノーマスクのルイさんが皆を見渡し攻略に向けた方針を語る。


「今日の段取りだけど、モモちゃんがEP注入。雑魚が沢山湧くからタンクさん達はローテで回して。さいとーさんは途中から耐火ファイアレジストバフをなるべく切れないようにお願い」


「「了解」」


消火ファイアファイティングの詠唱短縮獲得は間に合ったので、私とさいとーさんで燃えちゃった人に適宜。ポーション類の補填はするから危なかったら迷わず使って」


 サポートの引き篭もらないニートさん達から詠唱短縮に声にならないうめき声が出ている。


「じゃ長丁場になるけどみんなよろしくね!」


「「はい!」」


「みんなでさいとーさんの奢りで飲もう!」


「「おおー!!」」


 奢りの部分に期待感をやたら感じるが気合は入ったようだ。冒険者ギルド旗揚げのためにも、まずはイースト攻略。


 全てはここからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る