第7話 流されて魔法使い
昨日は結局、heaven hillのボトルを入れてしまった。700mlならハイボールが20数杯いけるのだ。それで一本2,500円ならコストパフォーマンスは高い。パチパチと強炭酸で弾けるバーボンの香りは悪くなかった。
ホテルで朝カレーを食べ終え、自室で仕入れた情報を報告メールに記載していく。
札幌イーストはナイトワークのメンバーが多く、主に昼間活動する自分との相性は良さそうであった。
実はチーム札幌イーストのサブリーダーでもあったマスターとの話は、途中から界の運営にまで及び、ルイさんの勧誘で協力店となったが界を失ったために店の売上が落ちただとか、界主じゃなくなったルイさんは、協力店バックマージンやアイテム販売利益がなくなり収入減でガールズバーの出勤を増やしただとか、ゲームの話なのか何なのかよく分からなくなっていたが、とりあえずゲームが生活の一部というか収入にまで影響を及ぼすものである事が分かった。
自分の
収入が増えるのはウェルカムだが、生活が場所に縛られるのは遠慮したい。とは言え、ススキノを攻略できたら、ハイ次の現場という展開も微妙だ。
魔法使いになるとメールに記載するのは若干躊躇したものの、他の選択肢もないため勢いで送信した。
ゲームアプリを立ち上げ、ルイさんにも魔法使いでチーム参加の旨をフレンドチャットで送信してオフィスに向かった。
計った様に朝礼をスルーし、席に着くと周りの視線が集まる。朝礼は出ないとまずかったのだろうか。
「斎藤さん!今晩ですからね歓迎会!」
「えっ? あっはい」
今日は金曜日だったか。
「19時に火鍋なんですけど場所わかります?」
向かいの営業マンにお店情報と地図をプリントアウトしたものを渡される。メールで送ればいいのにとは態々口に出さずに受け取った。
「主役なんで遅れない様にして下さいね!」
主役なんだろうけど、アウェー感が凄い。
とりあえず分かりましたと返答しそそくさと外出した。
ゲームアプリを立ち上げるとルイさんから返信があり、ドーリで魔導書買おうとの事。ゲームのやり取りの方がほっとするのは何でなんだろうか。
ドーリに向かう旨を返信し、昨日のベンチで観戦しながら待つ事、1時間。フード&マスクのルイさんが現れた。
「お金、持ってるよね?」
「第一声がそれですか……。一応それなりにありますが現金じゃないですよね? 今後ともよろしくお願いします」
「堅苦しいのはナシ。緩くいきましょ」
「了解。リーダー」
ルイさんに連れられて大通公園の一角へ移動する。何も無いが。
「アプリ! アプリ!」
「あ、なるほど」
スマホをかざすと、そこには猫の人がいた。⋯⋯というか猫の人に自分の腕がめり込んでいた。
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