街の灯り
小川貴央
第1話 無償の愛
「街の灯り」チャップリン主演~
今から94年も前のサイレント(無声)の名作である。
街角で花を売っている盲目の女性に一目惚れをした浮浪者が
身を削り苦労の末、やっと 稼いだ手術代を彼女に手渡して
名前も告げずに去って行く。
やがて数年後に、彼女は花屋さんで働いていて、偶然にも、
浮浪者と再会する。
彼女は自分の眼を治してくれた人は”金持ちの紳士”だったと
思い込んでいたのだが・・・。
目の前で目を潤まして自分を見ている浮浪者を哀れみ、 花を
一凛と小銭を手渡そうと近づいて浮浪者の手を握った瞬間に
ハッと気付いたのだった。
「You ?」(あなただったの!」
・・・世界で最も短く最も多くの人を感動させた名セリフ。
そのあと、
「You can see now ?」 (見えるようになった?)
「Yes, I can see now」 (ええ、見えるわ)
二人は見つめ合って涙を流している。
そして、The end .
それから二人はどうなったのか?描かれてはいない。
たぶん、今の映画だったら、結婚してハッピーエンド!
しかし、恐らく、浮浪者はさり気無く彼女に別れを告げて
旅をまた続けるだろう~
もっと、若くて素敵な紳士と結ばれて幸せになることを
祈りながら・・・
何の見返りも、思惑もない、ひたむきな純愛の気高さ、尊さ
どんなものよりも美しい!
今の映画だったらどう展開するだろうか?
自由奔放な恋愛が横行闊歩している世の中である。
先ずスマホでメルアド交換し、挙句にキスしてベッドシーン
それでお互いが「愛」を感じ合い、確かめ合う・・・。
現代人たちはこんな露骨でリアルに展開しないと満足しない。
「体」が「心」を先行する世の中である。
そこには自らを相手の為に犠牲にする究極の愛などよりも
「カネ」「見返り」「思惑」「打算」「性欲」の行き着く
駆け引きが見え隠れしている。
総ては昔の映画の様なスタイルが良い!とは言わない。
また決してプラトニックを推奨する訳でも無い。
しかし今の世の中は何もかもが急ぎ過ぎている。
そこには”心”がついて行けないのである・・・。
たった3分だけの名作ラストシーンに付き合って欲しい。
涙する人は果たしてどのくらい居るだろう・・・?
http://www.youtube.com/watch?v=LHBHdYgg9fI
~ 追記 ~
二つのキーワード、一つは「愛」もう一つが「お金」である。
どんなに無償の愛を叫んでもお金が伴わねば彼女の目を救う
事は出来ないのも現実である。
しかしチャップリンが生涯を懸けて訴えたのは単に男とか女の
恋愛ドラマの域を越えた、苦しんでる人に愛の手を差し伸べる
と言う、深い人間愛に根付くものではないだろうか。
街の灯り 小川貴央 @nmikky
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