第41話:武闘大会決勝戦 ライオスVSシンジ
村長さんと話を終え、ウィンディと合流してから村に戻った。
村長さんの話によると、儀式は武闘大会終了直後。
優勝者が代行者からの祝福を受けられるらしい。
でもライオスをそんな危ない目には合わせられないので、悪いけど、表彰式はぶち壊す。
その混乱に乗じてアカリちゃんを救えればいいんだけど……
「さぁーいよいよやって来ました決勝戦! この後、代行者様から祝福を受けられるのは果して誰なのか!?」
「「「「「うぉーーーーー」」」」
相変わらずの大熱狂。観客は20分ほど前の三倍くらいいて、舞台脇にいるフレイヤの所まで行くのにだいぶ苦労した。
そして時刻はもうすぐ夕暮れ。そろそろ用意を始めないと。
「決勝に駒を進めたのは、森の戦士、そしてダンジョンの主様の最強の守護者。ライオスー!」
「「「「「「うぉーーーーー」」」」」
「そして我らが門番にして、村長の息子、死なないでくれよ、シンジ!」
「「「「「「「「「「「うぉーーーーーー」」」」」」」」」
二人はちゃんと勝てたみたいだね。
それにしてもシンジの方が人気みたいだ。
ライオスは女性から熱い視線を受けているけど……
さすがはイケメン。我らが戦士長。
「さぁ、戦闘開始だ!」
「「「「「「「「「「「うぉーーーーーー」」」」」」」」」
始まりの大銅鑼とともに、シンジが仕掛けた。
得意の足の速さで、ライオスの周りを駆け巡っている。
でもライオスは動こうとはしない。
まぁ、この程度の速さなら何でもないんだろうけどさ。
っていけないいけない。準備をしなければ。
「フレイヤ、この試合が終わって、表彰式が始まった瞬間に
「何か分かったんですか?」
「うん。大分色々とね。でも敵に感づかれるといけないから、詳しくは話せないんだ。ごめんね」
「いえいえ。ツクモ様のことですから、きっと大丈夫なんですよね?」
フレイヤの優しい信頼。
でも僕は、それに自信を持って頷けない。
今回の敵ははアンクスの比にならないほど強いかもしれないから。
「う、うん。任せておいて。みんなは必ず僕が守るよ」
「はい。よろしくお願いします」
自分のことは守れるか分からないけどね。
すると
「ツクモ、私たちも手伝おうか?」
「ありがとう。そうしてもらうつもりだったよ。赤には村長の娘さんを救出してもらいたい。確か足が速かったよね?」
「そーだよ。お姉と妹よりは何倍もね」
今回、最悪でもアカリちゃんが救出できればそれでいい。
勝てなさそうだったら逃げる。こんなところで死ぬわけにはいかないからね。
もっと魔族の仲間を増やせば僕はいくらでも強くなれる。
だから今ここで決着をつけなきゃいけないなんてことは……あるかもしれない。
代行者を野放しにしておけば、村の人たちがさらに苦しんでしまう。
そして僕よりも強い勢力がこのリアスにいると、人魔共存区が実現できない。
つまり、また命がけ、か。
神の姿のままだったら死なんて恐れたことなかったのに、人間にされちゃったからなぁ。
まぁ嘆いていてもしょうがない。今回はライオスも
だったら大丈夫だろう。
「おっと、森の戦士が何やら手に纏ったぞ! これは……雷だ!」
実況のお兄さんが何やら興奮している。
ライオスが
代行者のことについて考えるのをやめ、舞台に目を移すと、ライオスの右頬から少しだけ血が流れているのが見えた。
あれはシンジがやったんだよね。
魔王に木剣で傷をつけられるなんて、並みの水晶級冒険者よりも強いじゃないか。
「なかなかやるではないか、ガキ」
「俺も精一杯ですよ。魔人かと思ってたら魔王だなんて、となる旦那はどんくらい強いんでしょうかね?」
激しいぶつかり合い。
木剣が雷を纏った右手とぶつかり、轟音を立てている。
ライオスの一撃でも壊れていない辺り、シンジが絶妙なタイミングで往なしているんだろう。
態勢を変化させて蹴りを入れようとしたシンジの左わき腹に、ライオスの膝が思いっきりめり込む。
今のは致命傷だろう。
「いってー 死んだかと思った」
「寸前で体をひねるとは、才能があるな」
ライオスが褒めてるよ。
こんな珍しいことがあってもいいのだろうか。
いつもイツビはボロクソに言われて泣いて僕の部屋に来るのに、シンジはよほど才能があるみたいだ。
「俺は優勝して旦那の弟子になるんだ!」
「そのような痴がましい望みは我が打ち砕いてやろう。死ぬなよ?」
ライオスが
そして右手には
「って、ライオス! 落ち着いて!」
「面白いガキだ。これで終いにする!」
「受けて立ちますよ。「
あのスキルは……確かアンクスの。
ライオスが目にも留まらぬ速さで突進し、シンジはそれを真正面から受けようとする。
あのままだとシンジが……
「俺が勝つ! 「朧月」」
シンジが何かを詠唱した瞬間、姿が見えなくなった。
これは幻術ではない。そしてライオスの拳が何かと激突した爆音が鳴り響く。
「な、中々の技だ。我の一撃で死なぬとは」
ライオスの声がした。そして彼の右手には深々と木剣刺さっている。
シンジは……見事に倒れていた。
「勝者、森の戦士ライオス!」
「「「「「「「「「「「「うぉー」」」」」」」」」」」」」」」」
これまで以上の熱狂。
ライオスは血の流れる右手を空に掲げて観客にアピールしている。
そしてシンジは、あまり血は流れていないけど、腕の関節がいけない方向に曲がっている。
いや、でもここまでやれたのは凄い。
真剣だったらライオスの腕を切り落とせていたかもしれない。
魔王に匹敵する実力、冒険者のランクでいうとアダマンタイト以上か。
仲良くなっておいてよかったよ。
「大丈夫ですか、ライオスさん」
舞台から降りてきたライオスに、フレイヤが駆け寄る。
カリンはその光景を見て、悔しそうにしている。
あの3人はそっとしておこう、
舞台に上がって、シンジの元へと行く。
僕に気づいたのか、シンジが少しだけ目を開いた。
「だ、だんな……俺、負けちまいました」
「いやいや。凄いよ。ライオスにここまで太刀打ちできるなんて。うちにいる狐よりも強いと思うよ?」
「狐、ですかい?」
少しだけ落胆したシンジに回復魔法をかけてあげた。
関節は元に戻り、折れた肋もくっついたようだ。
「僕はこれから仕事があるから、フレイヤの所にいてくれ。何があっても、アカリちゃんは助けるから」
「はい。お願いします、旦那」
回復したシンジは一人で舞台から降りていった。
なぜか僕一人が舞台に立っている状況。
そんな中で、背後からおぞましい気配がした。
一人の感じたことのない魔力。そして、シンジと似た「聖」の性質の魔力。
後ろを振り返ると、長い黒髪の少女が怪しげなローブに身を包んだ代行者に抱きかかえられていた。
昏睡状態の少女。アカリちゃんだ。
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