第39話:魔王な3姉妹

 3姉妹はあっけなく気絶した。

 水中にいてまた復活されても困るので、糸術で生成した強靭な糸で水竜たちを陸地まで引き上げた。

 あんな巨体を引いて泳げる自分の身体能力が少しだけ恐ろしい。

 ウィンディは褒めてくれたけど、これは完全にスキルのおかげなんだよね。


 陸地に引き上げても、3姉妹は普通に息をしていた。 

 別にエラ呼吸という訳では無いらしい。

 

 回復魔法をかけ、しばらく待っていると3姉妹が同時に目覚めた。

 

 「ん? 私は…… っは! 私たち、負けたの!?」

 「お姉、うるさい。頭に響く」

 「あと5分……」


 なんとなく3姉妹の性格が分かったような気がする。

 ジョーヌは寝ぼけすぎだ。起きたと思ったら、また目を閉じかけている。

 本当に寝るために生きてるな。

 

 「えーと、僕とお話ししてくれるかな?」

 

 するとお姉ちゃんが妹と目を合わせてから、頷いた。


 「強いならいいよ。それが掟だからね。私はブルー。こっちが次女のルージュで寝てるのが三女のジョーヌだよ。」


 やっぱりブルーか。それにしても魔族の掟は楽でいい。

 もっと強くなれば魔界にいる魔王達も仲間になったくれるんじゃないだろうか。


 「よろしくね、3人とも。じゃあ早速だけど、君たち、魔神様って誰かわかる?」

 「ん? そんな神様は聞いたことないけど? というか神様はもういないはずでしょ?」


 やっぱりか。だとするとあの村には宗教を使って何かを企んでる輩がいるのは確定。

 それもきっと代行者を名乗る人物のはず。

 でも祭りでは見かけなかったし、村の人たちはかなり代行者を信じているみたいだし……

 ただ街に来てくれそうな人を探しに来ただけなのに、また厄介ごとに巻き込まれるのか。


 「そうか。ありがと。そうでももう1つ聞きたいこちがあるんだけど、いい?」

 「「いいよ!」」


 急に聞き分けが良くなったな。

 こうしてみるといい子達じゃないか。寝起きが悪いだけで。


 「僕の仲間になってくれないかい? 自己紹介が遅れたけど、僕はツクモ。序のダンジョンの主をやってます」

 「ダンジョンの主!? それほんと?」

 「まぁ、一応ね」


 「そうよ! ツクモさんは私のご主人様なんだから!」


 ウィンディが後押ししてくれた。

 でも二人はウィンディのことを完全に無視。

 どうやら仲が悪いみたいだ。


 「まぁ、信じるわ。強いし、それによくみるとかっこいいし!」

 「えー? そうかな? お姉はこんな若いのがタイプなの?」

 「あと10分……」


 「あはははは……」


 なんか苦労しそうだ。

 ただでさえダンジョン内が女の子ばっかりなのに、この個性が濃すぎる3人を迎えるとなると……

 いや、背に腹は変えられないか。

 

 「それで、仲間になってくれるかな?」

 「「「いいよ」」」


 ジョーヌは起きていたようだ。

 ただ目が開いてないけど。

 

 許可を得たけど、一応何をするかを説明した。

 「生命授与」のことと、僕の目的の事。

 そして主従関係を結ぶことについて話した。

 それでも誰も反論はしてこなかったし、というより次女以外ちゃんと話を聞いてくれなかった。

 まぁいいんだろう。


 「じゃあまずはブルーからね」

 「はーい!」


 30メートルの巨体にもいつものように「生命授与」を使用する。

 昼間の太陽よりも眩しく大きく発光し、だんだんと収縮していく。

 思った通りの人型。

 この子達は魔王になることがほぼ確定している。

 なんたって、真魔獣王なんだからね。


 光が消えて現れたのは全裸の青髮長髪の美少女。

 胸がそこそこあって、身長は僕と大差ない。

 尻尾とかが生えてくるかと思ったけど、そんなことはなかった。

 見た目だけで言えば普通の美少女、でもそうなると、「尻尾剛撃テイルブロー」とかのスキルはどうなっちゃんだろうか?


 「気分はどう?」


 マジマジと自分の体を見つめて、手で顔を触っている。

 ここまで急激な変化だと、やはり驚くよな。


 「これが私!? すごい!」


 もうこの瞬間からブルーのステータスが頭に浮かんでくる。

 さてさて、どの程度の強さなのか……


個体名:ブルー(魔王) レベル50 MP2000


種族名:水竜神  


性質:魔


スキル:身体強化レベルMAX、水撃レベルMAX(15)、水魔法レベルMAX

竜鱗レベルMAX、水操作レベルMAX(15)、龍撃レベル3


パッシブスキル:水竜神、水撃強化、竜強化、以心伝心、主従(従)


 あれ、ライオスより強いかも。 

 このスキルが全部僕に加算されると思うと、少し怖い。

 

 「ブルー、自分で服作れないかな?」

 「この肌を隠せばいいのかしら?」

 「うん、頼むよ」


 すると青が白いシャツと短パン、そして黒のハイソックスを着た。

 

 「それはどうやったの?」

 「ん? これは竜鱗ドラコメイルだよ。どお? かわいい?」


 クルッと回って全身を見せてくれた。

 これが鱗だとはとても思えない。

 妹二人もおーっと言って感心している。

 明るい子だけど、アラーアネみたいな感じじゃなくてよかったよ。


 「可愛い可愛い。じゃあ次は二人同時にやろうか」

 「「はーい」」


 結構呑気に時間を使ってたけど、意外と時間がない。

 3姉妹が魔神じゃないと確定した今、どうにかして生贄の儀式を中止させなきゃいけない。

 

 両手で「生命授与」を発動させ、二人に触れる。

 するとすぐに現れたのは赤髪長髪の貧乳美少女と、黄髪の巨乳美少女だった。

 髪色が違うからわかりやすい。


 「大丈夫そう?」

 「なんか変な感じー。でも小さい方が動きやすいかなー」

 「もう、寝てもいい?」


 ジョーヌは相変わらずだ。

 姿が人型になったのに、全く動じていない。

 そして姉同様に、同じような外殻を身に纏ってくれた。

 ちなみに、ウィンディは僕の首にずっとしがみついて何やら拗ねている。

 さっき無視されたのが嫌だったのかな?


 二人のステータスはブルーと大差なかった。

 でも、ジョーヌが「超剛撃」というパッシブスキルを持っていて、ルージュが「超高速撃」というパッシブスキルを持ってた。

 でも、ブルーが持っていた「水撃強化」を二人とも持っていなかった。

 それぞれ得意分野に違いがあるようだ。


 「お疲れ様。それで、3人はここから離れても大丈夫なの?」

 「いいよ!」「別に」「寝れればどこでもいい」


 と、三者三様の答え、でもみんな合意してくれた。

 この子達を連れて村に行くとして、みんなは魔神様だと信じてくれるかな? でも一応口裏を合わせておこう。


 「ねえ、3人とも、少しの間、魔神のふりをしてくれないか?」

 「「「魔神?」」」

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