第43話 西田秋水の最後
ティケは長大なドラゴンメイスを軽々と振り回すと、召喚した地獄の猟犬に命じた。その美しい目には迷いの色などない。
「スペクターに、我が怒りの一撃を!」
「私の力を舐めるなよ!
長い
南守山中学校の校庭に狙いを澄ませた落下物の衝撃は、付近一帯に大規模な揺れと黒煙を伴う爆風をもたらせた。
土遁の術が遅れたカゲマルは退避しようとしたが、まるで紙屑のように飛ばされる。数える事、本日2回目だ。
「ティケ殿~! 健闘を祈る~!」
校舎を軽く越える塵を巻き上げた
「ふはは! 跡形もなく粉々に消し飛んだか……」
だが落下地点からやや離れた場所に、黒い塊がある事に気付いた。ヘルハウンドが身を固めて、召喚術者のティケを衝撃から守ったのだ。
「何ィ! あの爆発にも耐えただと!?」
片膝立ちで伏せていたティケはドラゴンメイスを杖にすると、ヘルハウンドの耳を撫でながら冷たく言い放った。
「……秋水、私がすぐに
「貴様! 本気なのか!?」
ティケは大声でヘルハウンドに下知を下した。
時を同じくして
「ヘルハウンド・ボールライトニング!」
ドラゴンメイスを振りかざしたティケが叫ぶと、4つの球電の全てが
「ぐわあああアアア!」
瞬間的に感電し、青白く発光した
動かなくなった秋水の肉体から、何かがヌルリと浮かび上がってきた。灰色のローブと頭巾を身に纏った魔道師、スペクターの本体に間違いない。
「うぬう! 愛する男を躊躇なく殺すとは……! 貴様! それでも人間か!」
「……どうかしら? ねえ、ヘルハウンド……」
「信じられん、レベルが違いすぎる……」
幻影のようなスペクターは、ブラックホール状になったヘルハウンドの牙の間に吸い込まれると、二度と浮かび上がる事はなかった。手にしていた水晶球が地面に落ちて砕け散る。
「……秋水!」
全てを見届けたティケは、急いで秋水の亡骸に向かって走って行った。抱き起こすと、彼女のセーラー服と同じくらいに彼の制服もズタボロになっていた。
ティケの大きな両目から、宝石のような大粒の涙がこぼれ落ちる。
「秋水! 私の全てを掛けてでも、絶対に助けてあげる」
いつの間にかカゲマルも2人の傍に戻っていた。
「ティケ殿……」
涙を拭ったティケは、すっくと立ち上がると、ドラゴンメイスを掲げながら長い長い
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