第5話 爆発
そして、とうとうフルーツロールとの決戦の日がやってきた。前の晩には、ご馳走が振舞われ、酔い潰れたモヒカンもいたくらい。やっぱり彼らも怖いらしい。
しかも、今度の敵は弱い村や市場ではなく、同じ戦闘集団のモヒカン軍団なのだ。
八つ当たり気味に、マシンに念入りな整備を要求してくるモヒカンも居るくらい、みんなピリピリしていた。
その日の朝、ナベとアタシたちはブラディ・ショコラのコンボイの後方に位置する、トレーラーに乗っていた。命よりも大事な燃料を積んでいるため、敵から離れた場所で待機するのがセオリーだ。時には、バギーや戦闘車に給油する役割を持つ。
「いよいよだね……」
アタシとポルテは思わず手を握り合っていた。自分たちは戦わないとはいえ、チームが負ければどんな目に遭うか判ったもんじゃない。しかも、その運命は他人任せなのだ。
トレーラーにも刻々と戦況が伝えられ、その知らせのたびに運転席のモヒカンたちが一喜一憂しているのを、妙に他人事のように見ていたそのとき。
双眼鏡で砦を眺めていたナベが、別人のような機敏な動きで鉄パイプを掴むと、トレーラーのハンドルを握るモヒカンを殴りつけ、運転席から蹴り落としたんだ!
「ええええええっ! アンタなにやってんの?」
アタシが絶叫するのと、助手席のモヒカンを蹴り落とすのがほとんど同時。小太りのくせに、意外と強いぞ、コイツ……。
棒立ちしているアタシたちに目もくれず、ナベは運転席にどっかりと腰を落とすと、ギヤを一段落とすと大きくアクセルを踏み込んだ。
猛然と加速するトレーラーが、敵の砦に向かって突進していく。
アタシとポルテは声も出せないまま、ひたすら抱き合っていた。
正直、それからはもう、なにが起こったのか覚えていない。
跳ねるトレーラーと、強力な旋回のG、胃を突き上げるような嘔吐感……それしか記憶していない。
気がつくと、全身を縄でグルグル巻きにされたブラッディ・ショコラのボスと、フルーツロールのボス--後でそう聞いた--が仲良く背中合わせに地面に座らされていた。
その後ろでは、フルーツロールの砦と、ブラッディ・ショコラのコンボイが炎に包まれている。不謹慎だけど、すごく綺麗で、しばらく見とれていたくらい。
そして、もう一人、ナベとは別のツナギを着た長身の男性が、夕日をバックに立っていたんだ。
ナベと親しげに肩を抱き合いながら。
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