第4話 点火
ボスがそう言い放ったとき、かすかにナベの顔が曇ったのをアタシは見逃さなかった。どうやら気が進まないらしい。
なんで……? 今さら?
さんざんモヒカン野郎どもに貢献しておいて?
「ナベはフルーツロールと何か関係あるの? ノリが悪いじゃん」
背を向けてキャブ調整をしているナベにさりげなく投げてみる。
ピクリともせず、平然と手を動かしながらナベは答えた。
「向こうに顔見知りの整備士が居る。前に居た世界じゃ、師匠にあたる。いろいろ教えてもらった人でな。
この世界で何とか生きていけるのも、あの人のお陰だな」
「じゃあ、どうするの? 混戦になったら、お互いどうなるか判らないし……敵でも、腕のいい整備士は殺さずに捕虜として取引に使ったりするんでしょ?」
アタシはポルテの頭を撫でながら尋ねた。
「そうだな。とくに、異世界からきた整備士はこの世界じゃ引っ張りだこだ。この世界よりテクノロジーが進んできるところが大半だからな。
しかし、今度の争い--戦争と言っていいレベルだな--はこの辺りの支配権を賭けた総力戦になる。何が起きるか、俺にも予想できない……」
目を落としたまま、答えるナベ。でも、その背中にはなにか強い決意のようなものが見えたんだ。そう、確かに。
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