『5がつ 10にち あめ』

朝 おきたら ご主人さまが いませんでした。


机の上に 書き置きが おいて ありました。


それには 帰りがおそくなる と 書いてありました。


ぼくは 糸が切れたお人形さん みたいに


「こころ」が 深いところに 沈んでいくのを かんじました。


それでも おそうじと おせんたくだけは しました。


これが ぼくの仕事やくわり だからです。


これすら ぼくが 出来なくなったとき


きっと ぼくは この家を 去るのでしょう。


別に めあたらしい ことでは ありません。


これまでも そうでした。


きっとこれからも そうです。


ぼくみたいな 生きものに 帰る ばしょ なんて。


もったいない こと ですから。




お昼ごはんを もそもそと 力なく 食べたあと まどの外の青空を ボーッと ながめていました。


家のドアを たたく音が しました。


ぼくは いっしょうけんめい 笑顔を 作って おでむかえ しました。


やってきたのは ご主人さまではなく


ドレイ 商人 でした。













たすけ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る