『5がつ 9にち くもり』
ちょっとずつ ですが 文字が わかるように なってきました。これからも 日記を つづけようと おもいます。
きょうは ごしゅじんさまが 軍 の えらいひと とおはなしをしに行って しまったので いちにちじゅう ひとり です。
おそうじをして おせんたくをして ご飯をつくったら もう やることが 無くなってしまいました。
ごしゅじんさまが くれた 「アマリリスのお花」を じっと ながめてみます。
とても きれいな お花です 。
ぼくなんかには にあわない お花です。
きっと きぞくの おじょうさま みたいなひとのために うまれたお花 なのでしょう。
ぼくの おとうさんは どこにもいません。おかあさんも こじいんに ぼくをすてました。
あまり ほこれるような おしごとでは なかったようです。
きぞくの 子どもと こじいんの 子ども。
どちらの いのちのほうが たいせつか なんて
いわなくても わかりますよね。
ごしゅじんさまが 帰ってきました。
「おかえりなさい」とぼくは言いました。
ごしゅじんさまは「ただいま」と 顔をくしゃくしゃにして ぼくを だきあげてくれました。
だいすきな ごしゅじんさま。
ぼくは あなたの あなただけの。
夕ごはんを 食べているとき 「アマリリス」のお話を しました。
ぼくは きたなくて びんぼうで ちいさくて ばかで みにくいんですよ と言いました。
きぞくの 子どもと こじいんの 子どもは ちがうでしょう と 言いました。
だから「アマリリスのお花」は 次からは ぼくじゃなくて べつのひとに あげるべきです と言いました。
ごしゅじんさまは 食べる手を とめて こう 言いました。
「おまえは オレの どれい だ。おまえの かちも オレが 決める」
(こんどは ご主人さまが 書いてくれなかったので じぶんで 書きました)
ぶっきらぼうに そう言って ごしゅじんさまは だまって しまいました。
なんだか すこし おこってる みたいです。
ぼくは またなにか まちがったことを 言ってしまったのでしょうか。
その夜は いっしょのベッドで 眠ってくれませんでした。
すこし さびしくて きらわれてしまったのかなって おもって。
ひとりのベッドは とても さむかったです。
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