『4がつ 30にち あめ』

ばんごはんを じゅんびしていると


ごしゅじんさまが


あめでびしょびしょになって


かえってきました。


たおるで ふいていると


ごしゅじんさまは

ぼくを

だきしめました。


よくわからなかったので

おおきなあたまを なでなでしました。


ごしゅじんさまは

ないていました。


ごしゅじんさまは からだが おおきくて

かおもこわいですが とても やさしいひとです。


びしょぬれの ごしゅじんさまは

ぼくと であう まえのおはなしを ぽつりぽつりと はなしてくれました。




すこしまえまで

ごしゅじんさまは

へいしでした。


むかしから このくにには


きぞく



へいみん


とよばれる ひとたちに


わかれていて


けんりょく というものを


うばいあって


せんそう というなまえの


おおきなおおきな けんかを


たくさんたくさん していたそうです。



いまも それは つづいているんだ。




ごしゅじんさまは つばをはくとき


みたいに まっくらな かおで


いいました。


そして たくさんの せんそうに さんかする なかで


ごしゅじんさまは わからなく なったそうです。


なにが ただしくて


なにが まちがっているのか。


ごしゅじんさまは

いのちが

かんたんに

うばわれる

せかいで


じぶんのために

かぞくのために

たくさんのひとを

ころしました。


ローマ

エトルリア

ゲルマン

サクソン

ヴァンダル

ゴート

フン

ギリシア

(これは ごしゅじんさまが かいてくれました)


いろんなひとが いました。


どんなひとにも

あいするひとがいて


それぞれの

かみさまが

いて。


ごしゅじんさまは こんらん しました。


なんのために

たたかえばいいのか

わからなくなりました。


たたかいのなかで

ごしゅじんさまは

たくさんのひとを

うしないました。


おくさんも

こどもさんも

おさななじみも


みんな いなくなってしまった のです。


いま 


ごしゅじんさまのとなり


に 


いるのは  


ぼく

だけ

なのかも


しれま

せん。


だから ぼくは

ごしゅじんさまにとって だいじ な



あまりりす



なの

かも。


なっとく しました。


ぼくは

こどもさんの

かわりです。


そうかんがえると なるほど とおもえました。


かわりの

おにんぎょうさん

なのであれば


くらくても

きたなくても

びんぼうでも

ちいさくても

ぼろぼろでも




なきむしで

よわっちくて

へたくそで

やくたたず で





きたなくて

いやしくて

がりがりで

きたなくて

きずだらけで

くさっていて

とても

きたなくて


ただ


ただ


きたなくて


うまれてこないほうが よかった


そういう


ぼくだとしても。



とくに


もんだいは ないはずです。


ひとりぼっちの ごしゅじんさまは


ぼくを うつくしいと かんちがい しているようです。


それは  おおきな  ごかい です。


かっこよく

うつくしく

すっきり

さわやかに



たいよう



みたいに



いきている。



それが


ぼくにとっての



ごしゅじんさま



です。


ぜったいに


ぜったいに


ぜったいに


ぜったいぜったい


ぼくなんかでは


ないのです。






たくさん おはなしを きいたあと


ごしゅじんさまと いっしょのべっどで ねむりました。



おとうさんがいたら

こんなかんじだったのかなぁ



なんておもうことは



きっと おもいあがり ですよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る