土曜日の昼ごはん
さんざん寝溜めをして、ニタローが一階に降りてきたのは午後1時を過ぎていた。
イチヒメはつまらなそうに「王様のブランチ」を見ている。
ダイニングテーブルのニタローの席には、ラップをかけた皿とフォークが置かれていた。
「これなに?」
「キノコの和風スパゲティ。嫌なら食べなくていいよ」
「や、食べる」
ニタローは皿をレンジに入れて温めはじめた。
「先週の土曜日もスパゲティじゃなかったっけ」
「先週はほうれん草のトマトスパゲティ。全然味が違うでしょ。嫌なら食べなくていいよ」
「いや、なんか土曜の昼の麺率が高いなと思って」
「土曜日の昼はだいたい全国的に麺なんです」
「うーん、俺の中では土曜日の昼といえば冷凍のピラフなんだけど」
「それはまだ私も小学校の低学年で、母さんがいないときに火を使わせてもらえなくて、ほぼそれしか出来なかったから」
「えびピラフ、高菜ピラフ、カレーピラフ、鶏ごぼうピラフ」
「今思うと、ほぼ炭水化物だけで栄養バランス的にどうなのかと」
「サラダとかもなかったな」
「小学生なんだから、昼になったら冷凍庫からピラフ出して皿に盛ってラップをしてあっためて食べる、それだけで頭の容量使い切ってるよ」
「もうちょっと後から、焼きそばとかレトルトの丼ものになったっけ」
「火や包丁を一人で使って良いことになってからだね。チャーハンも作ってあげたでしょ」
「結局ピラフ系だ」
「チャーハンは、具が全部みじん切りだし、卵は先に炒り卵にしないといけないから、結構手間かかってたんですけど」
「あんまり記憶にないなあ」
「あー、今まで料理して食べさせてやってきたのは何だったんだろう…」
「いや、何て言うか日常だからあんまり特別な印象とかはさ」
「じゃあ私が作った中で一番おいしかった料理、言って」
「ええ、あーっと、最近色々作ってるスパゲティはどれもうまいと思うよ」
「どれもじゃなくて、スパゲティの中で特においしかったのは何味なの」
「ああ、ほらもうチン終わったから食べないと」
ニタローはレンジから皿を取り出して、スパゲティを食べはじめた。イチヒメはまだ「だから一番はなんなのよ」とぶつぶつ言っている。
姉ちゃんの料理で一番うまいのは、サッポロ一番塩ラーメンのキャベツ大盛・卵入りだな、とニタローは思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます