キラキラ
キラキラキラッ
そのとき、何かが光る。
暗闇のせいでその光が三次元かそれとも、精神のなかか、曖昧だ。何色なのかも。
光に、助けてほしくて手を伸ばす。
ブゥワアアアアッと、風が吹き荒れる。
髪が舞い上がり、思わず目を瞑る。
胸がドキドキして、目を開ける。
掴んだ光は細長く伸びて。黄金に輝く杖となる。
杖は長く、トップには三日月と雪の結晶が表されている。
これは嘘かもしれない。
一瞬しかない夢かも。
でも、
私を、
……。
望んでいた非日常へ、嘘でもいいから飛び込んでみたい。
愛されなくてもいいとは、言い切れない。
でも非現実のスパイスで、その痛みを誤魔化せるなら。
杖を握る手に力が入る。
この杖、使い方知らない。
闇……黒い靄の中、振り回す。
なぜか闇が、〈夜の化物〉だとふいに理解する。
「私は行かない!! 地上へ帰せッ!! 行きたくない!! 地上に帰してッ!!」
そう、私は炭素……塵でできてる。炭素の塊だけど。
心に詰まってるのは渇望。―—愛されたいと希求する。
切望は叶わないかもしれないけど、「かも」の時点で叶うかもしれない。
塵には豪華すぎる望みだが。
退屈で倦んだ日常から抜け出したい。
刺激とスリルを与えてほしい。
親がいないと生きていけず。教室では頭脳と肉体の競争を強いられ。
いつになったら自由に生きられるんだろう。あと何年、狭苦しい鳥籠に繋がれていなければならないんだろう。
『卒業』という名の終わりは見えるけど、それまで先が長すぎる。
きっと就職しても職場内での成績をまた競争。他社とも競争。外国とも競争。……死にそう。
ただ愛されたい、それだけなのに。なんで。誰かの物差しで、誰かと優劣をつけられながら生きていかなきゃならないの?
サアアァァァ……。
頭上から一筋の光が差す。
光は鋭利に煌めき、あっという間に闇が晴れてく。世界が、景色が戻ってくる……。
でも。
すごく眠たい……。
私の視界はまたブラックアウトした。
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