2-4 (余聞)しがない占い師と宛名のない手紙 その2
お久しぶりです。
新しく見えた未来の光景が興味深いものだったので、ふたたび筆をとりました。
もはや日記のようになっていますね。
わざわざ手紙にする必要はないだろうとお思いでしょうが、あいにく飽きっぽい私には分厚い冊子を埋める自信などありません。たまに便箋に文字を綴るくらいがちょうどいいのです。
さて、私についての話はこれくらいにして本題に入りましょう。
新しい予知についてです。
オルラの神々が、人間として暮らすなどという馬鹿げた計画を立てたところまではお話ししましたよね?
実は、その突拍子もない案を出した最高神が行方不明になるんですよ。
付き添いと一緒に新天地を偵察しに行ったきり、音沙汰がなくなってしまうのです。
行動を共にするはずだったふたりの女神は、崩壊していくオルラを見ながら彼の帰りを待つはめになってしまいました。
激しい環境変化ですべての人間が死に絶え、他の神が次々にオルラを去っても、彼女たちは“境界線なき泉”から愛しい彼の名を呼び続けたのです。
何と健気なことでしょう。
涙が出そうですね。いい歳をした私はさすがにこれくらいで泣くことはありませんが。
で、そんな心すたれたおっさんである私の興味を引いたのはここからの展開です。
必死な呼びかけに答えるように最高神様はオルラへと帰ってくるんですけれど、残念ながら記憶をなくしているんですよね。彼。
どうしてそんなことになったのか、もちろん私は知っています。
そう、誰の仕業かをね。
犯人は誰かって?
……付き添いの女神、ですよ。
新天地についたあと、最高神シュヤララクは間抜けにも仲間の裏切りにあって記憶を消されてしまっていたのです。
私の予知はあくまで未来の景色が映像として見えるといった形なので、付き添いの女神がどういった心理でそのような行動に出たのかは分かりません。
ただ、最高神様が新天地で長いこと無事に暮らしていることから推測するに、彼女に悪意はなかったのではないでしょうか。
少なくとも私はそのように考えています。
最高神様はオルラに戻ってふたりの女神と再会を果たしても、自分が何者か分からないでいました。
自分が誰なのか、どうして記憶をなくしたのか、それに気づくのはふたりの女神を連れてふたたび新天地に向かったあとのことです。
もっとも、彼自身はオルラでふたりの女神と再会した時のことを夢だと思っていたので、二十一世紀の二ホンで目を覚ました際、彼女たちの姿を見てえらく驚いていたようですけれど。
今回のお話はここまでです。
何か進展があったらお知らせしますね。
それではまた次の手紙でお会いしましょう――。
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