四 ナツの終焉
しかし、そうして〝ナツ〟との戦いに彼らが一喜一憂している間にも、月日は静かに、だが着実に移ろいでゆく……。
――リーリー…リーリー…。
「こ、これはまさか……秋の虫だ! 秋の虫の声だよ、芹鴨くん!」
「はい、先生! ついにこの戦いも終わりを迎えるんですね!」
その夜も市街地での昆虫調査を行っていた山葉教授と芹鴨助手は、とある公園で微かに響く秋の虫の音を確かに聞いた。
その季節の移り目を象徴する一報はすぐさまNATU委員会にも知らされ、それよりあまり時を置かずして〝ナツ〟による影響は次第に終息へと向かっていった。
一週間後、まるで何事もなかったかのように〝ナツ〟は過ぎ去り、NATU委員会の解散とともに特命担当大臣の任を解かれた夜具内は、涼しい夕風の吹く河原の道を歩きながら、遠くオレンジに染まる入道雲を見上げ、ふと思う。
「〝ナツ〟って、いったいなんだったんだろうな……」
あれほどあの暑さに苦しめられたというのに、どこかぽっかり胸に穴の開いたような喪失感を感じる夜具内の耳に、さびしげな秋の虫の声が河原の草叢から聞こえていた。
(ナツ、襲来! 了)
ナツ、襲来! 平中なごん @HiranakaNagon
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