思考の錯誤

私は考えた

なぜ朝、日が昇るのかを

昼に腹がすく訳を

夜に聴く猫の引き攣れたような叫びが 何を意味していたのかを

私がここに居る意味を 要る理由を 考えていた

考えて、考えて

ひたすら考えた

毎日 考えた

夜、布団に入って 目を閉じるまでの数分で

何もかも嫌になって 駅のエスカレーターを昇る間に

機械越しの誰かの声を聞きながら


朝、靴を履こうとして履けなかったその間にも


私は考えていた

考えたけれど、けれど

どうにもみんな 既に答えを知ってるみたいだった

答え合わせすら いらないみたいだった

考えたこともない と当たり前の顔で 

みんな地平線上にいた


求愛のために猫が鳴くのはなぜか

エネルギーはどうして必要で

太陽と地球の距離がこんなにも遠く離れている理由は 


知らなくてもいいみたいだ 


だって、生きている

それだけで 許されている


意味も理由もなく ここに 居てもいい 

その理由がちっともわからない


だから

私は今日も 朝日を見つめて考えている

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