TAKE DOWN 11
あれから何度となくやり直しているが、ヤツは思った以上に
もはや打つ手はないように思えたが――よし、こうなったらヤケだ。まだ試してないことがひとつある。あまりにもバカバカしいので論外だったが物は試しだ。一発ぶちかましてやろうじゃないか。
それは「策を講じない策」という、無策に等しい王道だった。すなわち真正面からストレートにぶっ殺す、これ最強。
ピンの外れる音――。
俺の投げた手榴弾が玄関のドアを吹き飛ばした。もうもうと煙の立ち込めるなかを進むと、入り口付近には男が二人転がっていた。一人はドアの下敷きになっている。俺は消音器付きの拳銃を構えて、二人の頭を立て続けに撃ち抜いてやった。
何度も挑戦したので敵の数はわかっている。
やつらは総勢11名――残りはこれで9名。
玄関ロビーを通り過ぎ、廊下に出る。ちょうど曲がり角で二人の敵に出くわした。連中は驚いたのか一瞬動きが固まる。そして気を取り直して、すぐさま銃を構えるが――もう手遅れだ。俺はすでに間合いに入っている。一人目の喉にナイフを突き立て、そいつを盾代わりにしてもう一人を射殺してやった。
これで残りは7名だ。
廊下を通り過ぎる時、部屋の戸口のかげに隠れて銃撃してくる一団と
爆発の後には死体が2つ。
収穫は少なかったが――これで残りは5名。
廊下をさらに進む。突き当りの角を曲がると、長い廊下のその向こうに一番奥の部屋が見えてきた。あそこにターゲットがいる。しかしその部屋の手前には大きな脅威が待ち構えていた。大きな脅威は大きな男だった。かれは両手に一丁ずつ、サブマシンガンを抱えていた。マジかよ。
無数の
金属が打ち砕かれる音。分厚い鉄がへこみ、ひしゃげ、甲冑に穴が空く。殺されるのは時間の問題だった。なにか策を考えなければ……。男が近づいてくる。なにか方法はないのか?
そのとき、俺の目にあるものが留まった。突然の
俺は天井に向けて二発の銃弾を発射した。行き先はシャンデリア、終点は
俺の放った銃弾に留め具を撃ち抜かれて、天井のシャンデリアが落下した。大男はもうそこにはいない。かれの立っていた場所には、血の海だけが残されている。せいぜい地獄への旅路を楽しむといい。
これで敵は残り4名となった。
なんだか想像以上に調子がいい。初めは半信半疑だったが、正攻法ってのもたまには悪くないな――そう思って廊下を走っていると、突然俺の目の前で
まずい、撃たれた――でもどこから?
完全に油断していた。前方に敵は見えない。俺は一か八か、走行中の慣性にまかせて前のめりにダイブした。そして空中で身体を半回転させ、うつ
背中をしこたま打ち付ける。床が水に濡れていて気持ち悪い。しかしこれで身を低くした体勢まま、すばやく後方の確認ができる。そして思ったとおり――そこに敵はいた。後ろから襲ってきたのか。ショットガンを持っている。距離が離れててよかった。銃声。
残るは3名――終わりの時が近づいている。
一番奥の部屋は目の前にあった。おそらくこの中にターゲットが
引き金を引きしぼる。火薬が破裂し、木くずが飛び散る。ドアの下半分が吹き飛んだ。同時に部屋のなかから銃弾が飛び出してきた。連中、俺を待ち構えていたようだな。だが、それも想定内だ。
ピンの外れる音――。
俺は部屋のなかに
俺は武器を拳銃に持ち替えると、ドアの下に向けて勢いよくスライディングをぶちかました。飛び交う銃弾をかいくぐり、部屋のなかへと
まずは右手に護衛が一人、真ん中にはターゲットの男。ヤツは机の後ろで目を
もう一人は左手にいる男で――こいつはなかなかの
俺は床の上を滑りながら、左から順に照準を合わせて引き金を引いた。計三回。プシュッという低い音が戦いに
左の男はヘッドショット、頭部を撃ち抜いてやった。真ん中のターゲットは肩を撃たれて銃を取り落とした。右側の男は左胸に一発、残念ながらこれはミスショット。狙いが少しそれてしまった。まあ弘法も筆の誤りだ。ダメ押しでおまけに何発かプレゼントしておくか。
これで残る敵はあと一人。
さて、お楽しみの時間だ――。
俺は立ち上がると慎重に机の裏に回り込んだ。ターゲットは傷口を抑えながら戸棚に寄りかかっていた。
「何が望みだ? 金が欲しいならくれてやる」
じつに悪党らしいセリフ。
死にかけのクソ野郎にはよく似合う。
「金はいらないさ。それよりボスからの伝言だ。お前に長期の休みをくれてやる、だとよ。せいぜいゆっくり
俺はそう言うと狙いを定め、引き金に力を込めた。
だが――
「わたしが死ねば、この部屋は吹き飛ぶぞ!」
なんだと?――思わず俺の手の動きが止まった。
ヤツは床の上であえぎながら、勝ち誇ったように笑っている。
「この部屋だけじゃない。屋敷が丸ごと吹き飛んで貴様は終わりだ」
「バカな。ありえない」
「爆弾だよ。わたしの心臓が止まると同時に、遠隔操作で爆発するようにセットしてある。普段はスイッチを切っているがね。今日のように不審者が押し入ってきた時にはスイッチを入れるのだ」
「ハッタリだ」
俺は動揺していた。まさか、こんな……。ありえない。それじゃあまりに不合理だ。設定がおかしい。
「嘘だと思うのなら試してみたまえ。だが後悔することになるぞ」
「……ハッタリだ」
確信は持てなかった。しかし他に選択の余地はない。それに、そもそも今の時代にそんなことが起こるはずはないのだ……ありえない……。
気がつくと銃を持つ手が怒りで震えていた。ちくしょう、もうどうとでもなりやがれ――俺は半ばやけくそになって引き金を引いた。
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