CASE.10「ご都合マシマシ、時々オカルトだより」
「聞いてくださいな。昨日のブリッドマンは見ました?」
「おお、見た見た。幼馴染の正体がすべての元凶だったと知ったときは衝撃だったなぁ~。あと、怪獣地味にカッコよかった」
俺達悪名四天王の三人は、その悪評故に学園でも背丈の狭い生活を送っている。
「平和殿は見ましたか?」
「見てない。何度も言うけど、俺はアニメほとんど見ない」
不運の集合体と言われた俺はまず部活動関係の部屋に近づくことが禁止されている。インターハイや県大会が近づいているときは尚更と言われた。
俺の存在は風水のそれにすらも関わってしまうとのことだそうで……んなわけあるか。死んで詫びろ。
「おいおい。お前、深夜アニメあまり見ないのは知ってるけどさ。俺でもハマってるんだぜ? OPもカッコいいし、お前もハマるって」
「主題歌はカッコいいと思ったよ。でも、それでアニメ見るかどうかは話が別」
牧夫は普段から部活動で活躍しているため部活動関係の部屋へは近づけるが……喧嘩番長と名高いその異名通り、一部不良生徒の目に入りそうな場所は喧嘩が始まるので避けたいところ。
「くそっ、何としてでも、平和殿を沼にハメたいのだが……」
「アニメは子供が見るもんだって、変にガード固いぜ。アイツ」
「気分が向いたら見るかもくらいだから」
三句郎は普段のセクハラなどが原因でそもそも女性の目の届かない場所へ行けと散々な結果である。むしろコイツの方が行動場所が限られている。
「「「……はぁああ~」」」
とまあ、こんな感じで俺達腐れ縁。学園の“後ろ指さされてる三人衆”は自慢も出来ないような肩書を手に学園内を彷徨っているのだ。
一番行動しやすいのは進入禁止の屋上である。
……しかし、そんな俺達の”入室を許してくれる”場所があった。
「今日も”怪しい薬の匂い”で肩の凝りが治る~」
「新しい”魔導書”みたいなものが増えているけど……悪魔でも呼ぶ気か?」
牧夫と三句郎は、とある一室の客用ソファーに腰掛け、それぞれ不穏な言葉を吐いている。
真っ黒なカーテンで日差し一つ入らない空間。部屋を照らすのは骸骨によって彩られた蝋燭とランプのみ。まるでアンデッドの群がりそうなダンジョンのような部屋は、怪しい古文書みたいな本だとか、拷問用具だとか、あちこちに書かれた魔方陣だとかで不気味さ全開である。
「相変わらず、物騒な部屋だな、ココ」
「部屋を借りてる分際が好き放題言ってくれる」
俺達三人衆の言葉が癇に障ったのか、この”部屋の主”は呆れた声を出した。
染められた銀色の髪。カールで飾られた長い髪の女子生徒は大きなマントと魔改造の制服、そして赤いインクで飾られた眼帯をつけるなど、見た目の怪しさ全開。
「いますぐ三人揃って、儀式の生贄にしてもいいんだぞ」
……ここは”オカルト研究部”。
ここ常春学園で正式にクラブとして認識されている場所だ。
そしてその部活のリーダーが、この“
「遠慮しとくでございまする。あっ、でも、拷問プレイなら是非とも……」
「焼却炉にぶち込むぞ、貴様……?」
オカルト研究部。その不可解な活動という事もあって、クラブ界のつままれ者。
三句郎はここの部長である五ヶ瀬とは非常に仲が良いらしく、オタク仲間らしい。こうして、付き合いさながらに部屋を貸してくれているのである。
「あ、そうそう、今日の学園新聞見たでござるか?」
三句郎がテーブルの上に学園新聞を広げる。
「例の彼氏にしたくないランキングその他諸々の今月の結果でございますが……やったな、俺達四天王が性懲りもなくランキングトップでござるぞ」
「威張れることかよ」
例の悪評ランキング。彼氏にしたくないだとか、友達にしたくないだとか、そもそもお近づきになりたくないだとか……そういったランキングトップ3は常に俺達四天王が上位を飾っている。
「まあ、俺は今のところ交際に興味はないからな! 気にはしないってな!」
「俺は気にするでござるぞ~! 俺だって女の事イチャイチャしたいでござるぞ~!? 俺の何が悪いって言うんでござるか~~!?」
セクハラとか盗撮とか、そういうスケベ心全開な所に女性が引くんじゃないかな。その発言を過去に34回ほどしてる為に俺は何も言わない。
「平和殿! その無駄に完成されているイケメン面を寄越して! そうすれば俺にもワンチャンあると思うのですが!」
「ないと思うよ、たぶん」
俺は堂々と言ってやった。
「わからないぞ、西都君。女性って言うのはまず男をイケメンかどうかで判断するからな。ハンサムであれば大体の行動は許してしまうものだぞ」
”女性”である雛音の発言に何処か納得してしまう。
「現に、私が西都君から頭を撫でられても多少は何も思わないだろう。だが、三句郎からそれをされたとなったら……射殺する」
「ブチ殺すほどに、俺が不愉快!?」
自らの手で罰を与えるとまで来るか。哀れなり、三句郎。
「まあ、西都君が女性の頭を撫でる事なんてそうそうないだろうがな」
「俺のこと結構分かってるじゃん。ただ、“そうそう”じゃなくて“ほとんど”ね……まぁ、そういうの興味ないけど」
新聞のランキングとか、そういうのは興味ない。俺はそっぽを向きながら、そう呟いた。
「……ところで、このファッションセンスゼロランキングに堂々と俺の名前あるんだけど。コイツらを特定する黒魔術とかないの」
「私をグー●ル感覚でつかうなっ!」
そんなので自分を使わせて溜まるかと雛音は新聞を取り上げた。
「それはそうとだ、平和」
雛音は面白げな表情を浮かべながら、胸ポケットから何かを取り出す。
「頼まれていた、お守りを持ってきたが……いるか?」
ここへ遊びに来る理由。それはもう一つある。
五ヶ瀬菊音はマジックアイテム集めの趣味もある。今日も又、幸運を届けてくれるというパワーストーンのお守りを持ってきていた。
「期待はしない」
「毎度あり」
俺は雛音から、お守りを受け取った。
____もうすぐ学園が閉まる時間になる。
一同は帰る準備を始めた。今日の駄弁りは名残惜しいがここでおしまいである。
「ところで雛音どの。今日のお守りは何処から?」
「とある山奥の村から買ってきた。宗教の勧誘しつこかったりとか、夜になったら村人全員目つきおかしくなって、その日の村の脱出が大変だったりとか……いやぁ、手に入るのは本当に苦労したぞ!」
頃合を見て、捨てるかコレ。
想像以上に物騒な呪いがないかどうか。しばらくはその活躍に免じて、試しておくことにしておいた。
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