第27話 暗闇
翌朝、いつもより早く目が覚めた私は少し早く学校へ向かっていた。
なんとなく胸騒ぎがして授業の前に少しでもジェード様と話がしたかったからだ。
学校に到着し真っ先に職員室に顔を出した。
けれどまだジェード様は登校していないらしく、残念に思いながらも教室に向かおうと踏み出した瞬間。
「…え?」
一瞬で周りの景色が真っ黒く塗り潰された。
「なにこれ……っ」
自分の体は目に見えるのに回りの全てが闇に飲み込まれてしまったように黒い。
さっきまで廊下にいたのに……!!なんで!?
ダメだ、こんな時ほど落ち着かなきゃ…まずは状況把握ね
パニックになりかけた自分を落ち着かせるように拳を胸元に当てて深呼吸する。
焦って感情に流されても事態は好転しない、今できることは落ち着いて状況を把握しここから元の場所に戻ることだ。
まずは手を伸ばして辺りに壁がないか探ってみる、すると指先に固い感触があった。
一歩踏み出して触れてみると壁のようだ。冷たく固いそれに触れていると体温を奪われるような気がして慌てて手を離す。
私の勘があの壁に触れちゃいけないって言ってる……
根拠はないけれどそう感じた私は一歩後ろに下がった。
するとズズッと大きな石を引きずるような音がして目の前の黒いものが動いた。
……動く壁?
脳裏に浮かぶのは前世で見たアドベンチャー映画。
古代の遺跡に忍び込んだトレジャーハンターが、宝を目指して罠を潜り抜けていく作品で罠の中に壁がじりじりと迫っていくシーンがあった。
それを思い出してしまい、まさかと思いながらも私は真っ黒の世界を走り出していた。
なんでこんな時にあんな映画のことなんて思い出すのよっ!!
自分の記憶を理不尽に責め立てながら走ると後ろから引きずるような音を立てながら何かが追いかけて来る。
これ絶対捕まっちゃダメなやつ!
見えない何かから必死で逃げる。
けれど逃げても逃げても何かは追ってくる。
振り返らないで足を動かしていたがやがて何かは追い付いたのだろう、すぐ後ろから声がした。
「もう逃がさない」
「っ…!?」
悲鳴をあげる間もなく私の体は黒く冷たいものに覆われた。
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