第14話 愛情-ジェード視点-
最近やたらとアンジュという女子生徒に絡まれる。
時々こちらに熱の籠った視線を向けてくるので対応に困っていたが今日は直接誘いを受けた。
何度断っても『二人きりで』と誘ってくる。いい加減うんざりしているとこちらに手を伸ばしてきた。
人目の無い廊下で何を企んでいるのか知らないが、気安く触れられたくはない。
そう思い避けようとしたその時だった。
「私のジェード様に触らないで」
ふわりと金色の妖精が割り込んできた、ように見えた。
妖精に見えたのはほんの一瞬でよく見ればそれは私の婚約者であるアリスだった。
なぜここに、という疑問と共にこんな所を彼女に見られたくなかったという気持ちが沸き上がる。
もしかして嫉妬してくれたのだろうか?
彼女が、私の為に。
そう考えるとこの場を見られてしまった後悔を上回る程の喜びを感じてしまう。
にやけてしまわないように気を付けているとアンジュはアリスに対してとんでもない侮辱を口にした。
思わず手が出てしまいそうになり、拳を強く握ることでなんとか自分の感情を押さえつける。
アリスの制止がなければ女子生徒といえど手をあげていたかもしれない。
我ながら彼女に関係する事だとどうしても感情的になってしまう。最愛の人の前で無様な姿は晒したくない。
しかし私に触れられて頬を赤く染めるアリスを見ていたら、アンジュの事などどうでもよくなってしまった。
今度はもっとたくさん触れたいという欲求をなんとか押さえ込む。
彼女が一定の年齢を迎えるまでは手を出さないと彼女の父、そして私の友人でもあるアリスの兄と約束しているのだ。
念書まで書いている以上、約束は破れない。
なんとか理性で押し留め無事に彼女を寮まで送り届ける。
婚約する前は妹溺愛主義である友人の王子に呆れていたが、自分も同じかそれ以上にアリスを溺愛している自覚はあった。
こんなに深く強く愛しさを感じるだなんて思っていなかった。
――当然だ、だって俺はずっと前から×××の事を―――
不意にどこからか声が聞こえた気がして辺りを見回すけれど既に暗くなった帰り道には人影などない。
気味悪く感じ聞こえた声を気のせいだと思うことにして、自分に与えられた寮へと帰る道を急いだ。
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