その2

 ここで、まずトラノスケとテモワンについて語りましょう。

 トラノスケは、カンタールと同郷おなじところの出身で、農民の子供でしたが、カンタールに見いだされて、一軍を任される身分になりました。

 彼についてよく知られるエピソードは、皇国への遠征中に、ドラゴンと遭遇したときのハナシが有名でしょう。ある日のこと、トラノスケの指揮していた部隊が、あらゆるものを喰らうドラゴンに遭遇しました。

「ど、どうしましょ?」

「まかせよ!!!」

 そのとき彼は、ドラゴンとにらみあって退散させたそうです。

 そのために、部下の兵士から、尊敬と、からかいまじりに

「ドラよけ虎」

 と、アダ名がつけられました。

 一方のテモワンは、経済特区『九竜クーロン』の出身で、上客であったナオイエとの代わりにカンタールと交渉しているうちにスカウトされて、そういう官僚として交渉を任せられたという方で、皇国での和平交渉でも活躍しました。

 さて、なぜこの2方を並べて紹介したかというと、彼らがカンタールの部下の中にある対立関係の典型よくあることなケースだからです。

 例えば皇国遠征でテモワンとしては、よきところで和平交渉に持ち込みたかった訳ですが、トラノスケにしてみれば

「なんだ、あいつは人が手柄をたてるのがいやなのか」

と、なります(実際、周囲にそうもらしていたようです)し、テモワンは

「あの猪武者、この泥沼をなんとかする機会にゃのに、まだ戦う気でいるにゃ」

と、不快感をあらわにしていたそうです。


「はいはい、お嬢さま、しつもーん!」

 あら、いつもの従者めいどはどうしたのかしら?

「今回は、あたしがその従者メイドでーす!!!」

 そう、じゃ、質問てなあに?

「トラノスケさんは土木建築に功績があるし、テモワンさんも対皇国の海戦で撤退に成功したりと、お仕事的にはそこまで対立してない気がしまーす。なんでギスッてるんですか?」

 そうね、武将なんて色々出来てナンボだし、2人とも内政軍事両方とも出来てたんだけど、対皇国での方針が違ってて、それが個人的に合わないとかもあって、抜き差しならない対立になったということかしら。

「はーい、わっかりました!!!」

 あの娘も、これくらい素直だと良かったんだけどねえ。




 こうして、カンタールの後継者たちは、たがいにいがみ合っていました。この隙を野心ある人物が見逃すはずが、ありません。天京院春見がいよいよ動き出すときがやってきます。!!!


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リベンジャーズ・トラジティ 今村広樹 @yono

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