布石

その1

 さて、長々と、とても長々と皇国への遠征が続いていました(5年以上)が、それを主導していたカンタールの死により帰還かえることが出来るようになりまして、今こうして第1陣が帰ってきています。

 その中に、とりわけ威厳えらそうなかんじのある武将が1人。彼の名前はトラノスケといいます。かれはどこかイライラしている風で、キッと陸のほうを見すえていました。

 その船が向かう陸には、ルッグがいました。やがて船がやってきて、その船から兵士たちが下りていきます。その中にトラノスケを見たルッグは、

「やあ、トラノスケさん、おかえりなさい!」

と、頭を下げながら言いました。

 しかし、トラノスケはそれを見て、不快そうに顔をそむけると、そのまま立ち去ってしまいました。




 そのことを、僚友ともだちのテモワンにグチったルッグは、そのテモワンからこう言われます。

「そりゃそうにゃ。キミからそんなこと言われるにゃんて、激おこぷんぷん丸になってしまうにゃ」

「なぜです?」

「トラノスケにとって、キミは和平交渉や、そもそも後方にいることによって、自分とちがって働かない、むしろにゃからにゃ」

「えええ……」

「これから、どんどんそういうのが増えるにゃ。覚悟するんだにゃ」




 結論だけ言えば、テモワンの忠告というかアドバイスは的中することになります。ルッグのそういうある種の無神経くうきのよまなさは、内乱を通じて彼のウィークポイントになります。

 と、その前に、文中ではいきなり現れたトラノスケと、テモワン、そして皇国との和平交渉について紹介しましょう。

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