指令と結果

 さて、ハナシを2話で紹介したジュウベエに戻しましょう。彼は、とあるおいえにいました。

「やあ、遅くなってすまないね」

「いえ、待つことには慣れてますから」

「……ホントかねえ」

と、軽く首を振った赤い髪の少年の名前を、ボルカノと言いました。彼はその姿ふうぼうから『鳳凰のひな』と呼ばれていました。

 余談ながら、来訪者と獣人、両方の血を引くものたちの中には、いわゆる不老となることがあります。この現象がおこるのは、さらにこの世界の先住していた者たちの影響を受けているということであるらしいです。これまで出た方々の中だと、春見さんや、今回のボルカノさんが、それにあたります。

 という余談むだばなしはおいといて、ボルカノはこう切り出しました。

「まあ、例によって、キミに頼みたいことがあってね」

「なんです?」

「来るべき時のために、邪魔者を排除しろってさ、春見さまがね」

「わかりました、ではさっそく」

「……やっぱ待つの嫌いじゃないか」

 あきれるように言う、ボルカノに、ジュウベエはこう返した。

性分そういうもんですので」

と、邸の中からこんな声が聞こえてきました。

「ねえ、ハナシを聞いてくださいまし!!」

「わかったわかった、痛い痛い!!」

 ジュウベエは、なんか察しましたが、一応ボルカノに訊きました。

「御曹子と奥さん、なにかあったんですか?」

「うん、まあ地雷ふんだんだろうね……」

 2人はチワゲンカを延々聞かされるのが、ほぼ確定であると理解して、互いに苦笑にがわらいしました。



 さて、今まで内乱にいたる情勢や各キャラクターの事情なんかを語ってきましたが、物語の終点おわりになるのは天京院の御曹子ことあきただと、その奥さんであるシエさんとの間に跡継ぎであるお子さんが誕生するまで。

 この事実からもわかる通り、内乱の結果として帝国内における天京院春見の影響力が強くなり、ルッグは処刑台の露と消える憂き目にあるのです。

「お嬢さま、今それいっちゃ」

 歴史を語ってるんだからそれはしゃーないじゃない。ネタバレというわけでもないし、ここら辺はばらしてもいいでしょ?

「はあ、わかりました」

 不服そうね?

「いえいえ、なんの問題もありません」

 ならいいわ。

 さて、歴史というものは川の流れや旅の道順に例えられることが多いのですが、つまるところが同じでもその課程なかみを学んだり描くことに意味があるのでしょう。

 わたしが今語ろうとしているのは、今まで紹介した方々や、これから紹介されるであろう方々が内乱においてどのように行動したか、そしてどのようにしてをむかえるか、ということであります。

 では、ハナシを皇国領に遠征していた兵士や将校が帝国に帰ってきたあたりから、新しく始めてみましょう。

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