サコン

 さて、ここでハナシの流れを戻して、1の紹介をしましょう。

 ある時ルッグは、旧知むかし友達しりあいにあって、こう訊きました。

「わたしもそれなりの地位になったので、そろそろ腹心的なものがほしい。だれか者はいないものか」

 友達はこう返します。

「わたしの師は、こんなことを言っていました

現代いまにおいてなすべき務めを知っているのは、才徳のある者だ。帝国にも深淵アビスに潜む竜や、鳳凰のひなのような、未来になにごとかなす者がいる』と。わたしは竜のほうを知ってるので、紹介しましょう」

 その者は、サコンという名前の猫で、帝都のはずれに庵を造って暮らしていました。

 なぜかというと、彼は母が亡くなってしまって、哀しくなって寡黙になり、古典を読んでばかりでいました。

 ルッグは

「あなたは、今の世をどう思います?」

「弱ければ、他に喰われてしまう、恐ろしい世ですにゃ」

「そうです、だからこそ、あなたのような方が、学問ばかりしてはなりません。その恐ろしい世の中を、わたしといっしょに少しでもよくしていきませんか?」

 サコンはなるほどと思い、ルッグに仕えるようになりました。




 こうして、ルッグは生涯にわたって漢と書いて友と読む、そんな関係性の者を得ることができました。そして、サコンは来るべき内乱でを果たすのですが、それは別のハナシ。

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