前兆
さて、カンタールという方は、衰退した帝国を最後まで支えようと、改革、外征と奮戦していましたが、志半ばで死去していました。その柱石を失った帝国では、さまさまな思惑が交差していました。ここで内乱の中心人物の動向を押さえておきましょう。
ここはカンタールの邸宅。主人の訃報に家人たちが
その者の名前をルッグと言います。
彼はいわゆる獣人と呼ばれる種族の中でも珍しい犬頭でした。というのも、この大陸において獣人と呼ばれるのは
ルッグは、秋月国は淡海の出身で、カンタールが秋月国に遠征した時、彼が連れてきた、腹心と呼ぶべき存在でした。今日は、カンタール夫人であるロージィと、カンタールの跡取りであるエリルに今後のことを相談するため、来たのでした。
「おそれながら、対皇国に派遣されていた部隊の撤退がようやく終わりました」
「お疲れ様です」
「また、混乱を避けるため、1週間ほど、カンタールさまが亡くなられたのを秘密にしたいと思います」
「わかりました。・・・・・・カンタールさま亡き後、頼りになるのはあなただけです、頼みましたよ」
「たいぎであった」
ロージィとエリルにこう言われたルッグは感激のあまり、床に伏して泣くのを
「お嬢さま」
なあに?
「いきなり皇国だの、獣人と言われても、読者の皆さんが困ると思うのですが」
うるさいわね、わかったわかった。
皇国というのは、帝国の交戦国の1つで、カンタールは晩年この国への侵攻で失敗してた中で没したのも彼の死を秘密にしたい理由ですね。
また、この大陸における
獣人は大陸においては猫タイプであることが多く、ルッグのような犬タイプは珍しいです。それが、彼の命運を左右することになりますが、それは別のハナシ。
「なんか雑ですね」
まあ、こんな感じで、説明必要なときにやればOK でしょ。
さて、そのころ、
その報告に来たのは、腹心の1人である、カオスネールという者でした。
「春見さま、物見からの
「うむ、亡くなられたようじゃの」
と、うなずいた春見は、襟元がはだけていて、いわゆる女性とのイチャイチャの後らしい風です。
「……仕方ないとは思いますが、服装もう少しなんとかなりませんでした?」
「時間がなかったんだ、すまぬな。それはともかく、いよいよ嵐がくるようじゃの」
「は、いよいよ荒れますな」
「ふん、いかに荒れようが、生き残ってやるさ」
春見は不敵に笑いました。
かくして、内乱への道すじは徐々に整えられていきます。その先に待ちかまえているモノを、ルッグと春見の2人はまだ知るよしもありませんでした。
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