ジュウベエ

 その少年の名前をジュウベエといいます。

 島国である秋月あきつきから大陸にやってきた家系の末で、父のテルムネは、てんきょういんという帝国にいくつかある名家の1つに仕えていました。

 彼は小柄で隻眼でしたが、2人がかりで持つ鍋を1人で持つほどの力持ちで、知恵のはたらきも人より抜きんでていました。そのために、街の若者や母をはじめ親族は皆彼を恐れていました。そのため、彼を愛し引き立てたのは、父のテルムネだけでした。




 さて、ジュウベエはいわゆる学問というものにあまり親しみませんでした。

 彼曰く

「文字を学んでも名前を書けるだけです。数字を学んでも買いものにしか使いません。兵法や剣術を学んで、万人を相手に戦える方法を知りたいのです」

 父のテルムネはそこで、れつどうせんというお坊さんにジュウベエをあずけました。

 義仙は、ジュウベエに剣術の才があることを見抜くと、かれを達人にまで育て上げました(ここらへんの詳細は、そのうち語られることもあるでしょう)。




 さて、ある時、大陸最大の国家である帝国の皇帝と家宰であるカンタールという人が彼らの住んでいたニューラグーンに来ました。

 その行列を見学していたジュウベエは

「おれも天京院さまを盛り立てて、あのカンタールに成り代わってやるぞ」

と、言いました。

 義仙はジュウベエの口をふさぎ

「むやみやたらにそのようなことを言ってはならぬ。一族皆殺しにされるぞ」

と、言いました。

 しかし、義仙はこのことから

1:ジュウベエのただものでなさ

2:帝国とそれを仕切るカンタールの衰退

を感じたそうです。




 はたして、それからすぐカンタールは病死してしまい、帝国は内乱への道を進むことになりますが、それは。お楽しみに。

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