『或る台本』
『或る台本』。
あることをきっかけとして、このような金庫のような物に押し込まれている台本は、「その本に芝居を書き連ね、本を閉じた瞬間から書かれた内容が一言一句再現される」という力があり、書かれたすべてが再現された後もう一度この本を開くと、書かれていた文言はすべて消え失せている、という話だ。
そんなセカイ系みたいな話があってたまるか、というところだが、部長をはじめとした諸先輩や顧問の先生までもが妙に真剣な表情でそれを言うから質が悪い。
「演劇部」ということを加味すると胡散臭いことこの上ないのだが、それに付随したエピソードがまた煽り強度の高いものだ。
例えば、「どうしても殺陣のシーンがうまく行かず、やけっぱちでこの台本にしたためてみたらテレビの時代劇も顔負けの演技が展開された」とか。
「物は試しと、10ページ以上の長台詞を勝手に追加してみたら、一言一句間違うことなく、口ごもることもなく言い切った」とか。
果ては、「コンクールで面白半分で使ってみたものの、誤字をも反映してしまったためにその後反省した部員一同はこの台本を封印することを決めた」というものだった。
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