かくて、親友はキミの夢を見た
その影がかろうじて、大翔であると気づいたが、莉雄にはもはやなにも出来そうになかった。
大翔が言う。かすかな声であった気がするが、莉雄にははっきり聞こえた気がする。
「莉雄、お願いがあるんだ。葵を、支えてやってほしい。お前は現実に帰るんだ」
莉雄は、必死に声を絞り出した。
「は、ると、は、どうする、の?」
「俺は元々、もう限界だった。だから気に病むな。……いつか、お前が俺を助けたように、今度は俺が、お前を助けてやる。ざまあみやがれ……残されると辛いんだってことを……知りやがれ。……悪いな」
大翔へ、何か、何か言わなくては。もう、何も言えなくなる……
「じゃあな、莉雄。さようなら。俺の、親友」
「あ、ああ……さよ、なら……ボクの、親友」
莉雄は、全身の痛みが引いていくのを感じた。そして、暗い静寂の中をどこかへ運ばれていくような感覚を覚えた。
ふと目を覚ますと、そこは薄暗い部屋のようだった。
飼い猫のエリドゥが居る。彼は一声鳴いて、歩いて行ってしまった。
だが、自室じゃない。ここは……どこだろうか? 殺風景な部屋には、小さなデスクスタンドがある机が一つと、パイプ椅子が三つ。莉雄は自分が拘束具を着せられていることが分かる。
そして、目の前に、燃えるような赤毛の男性が居た。白衣を着た研究者のような風貌だ。その奥に、壁にもたれかかっている浅黒い肌をした髭の男もいる。
目の前の男が言う。
「初めまして、でいいだろうか? 言世 莉雄。私はヴィルヘルム・フランケンシュタイン。対スパルトイの研究をしている団体、プロミネンスの日本支部、所長代理を務めている。あの壁にもたれかかっているのは、アブド・ファハッド。彼も優秀な研究員だ」
そして、莉雄の前に膝をついてしゃがみながら言う。
「ようこそ、いや、おかえり。……現実へ」
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