星々の会合・前編


「さて、昔話はここまでにして、今の話をしなければならない」



 数多の意識が散在する中で、神々は結論を求められている。


 意識しか存在しない世界で、彼らは夢想し、議論する。


「それで、人類を滅ぼすべきか、否か」


 彼らの間でも意見は割れた。

 滅ぼすべきという者と滅ぼさずにおくべきという者と……だが総じて、総意は一つ。


「彼らが『面白い』か、否か」


 ある一個体が言う。


「彼らはまだまだ伸びしろがあると、ボクは思うよ。滅ぼすにはもったいない」


 その意見に皆がざわめき、否定し、肯定し、議論の渦がゆっくりと回る。

 先ほどの個体が続ける。


ハルモニア先の個体は早計だったんだ。そうだとボクは判断する。だからこそ、ボクらの想定してないない者が現れた。そうだろう?」


 ざわめきは徐々に小さくなっていく。

 その個体の発言に、彼らは注目する。耳を傾ける。意識だけの存在が意識を向ける。


「だから、実際に見てみればいい。彼らが……『面白い』かどうか……そのうえで、今一度、流すなり焼くなりすればいい。でもね……」


 そして、その個体は言う。


「見ればきっと、面白いよ……」


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