第7話 六つ目の不思議
結局、学校の七不思議を探しに来たけど、全く見つけられなかった。
やっぱりただの都市伝説だったのかな。
それとも他の学校になら七不思議があるのかも知れない。
また機会があれば他の学校に侵入するのもありかも。
思い出した。
この学校にも一つ不思議な話があるんだった。
「そういえば、校庭の桜の話知ってる」
これはこの学校に伝わる昔話。
校庭の桜並木の中に、一本だけ早咲きの桜がある。それ自体は特別なことがない。
そして、その桜は一番花をたくさん咲かせる。それ自体も不思議なことじゃない。
「ああ、もちろん知ってるよ」
ほとんど学校に来ない櫻庭くんですら知っているんだ。
「桜の樹の下に埋まってるって話だよな。それ、実はさ。お……」
「なんだ、知ってるんだ。お弁当なんだよね」
そう、あたしは見てしまった。
結構昔の話。
ある日、女子生徒がこの桜の樹の所で、同じクラスの男子に告白しようとしていた。
なかなか告白する瞬間なんてお目にかかれないから、あたしのテンションは最高潮だった。
あたしは青春だなと思いながら、少し離れたところから一部始終を眺めていた。
でも、ダメだったんだと思う。後から彼女が泣いていたところを見たから。
その女子高生が次の日から毎日、昼休みにこの樹に来るようになった。
何をしているのかと思えば、お弁当を根元に埋めていた。
なんてもったいないことをするのかと、あたしは怒り心頭だった。
どうも振られたことをきっかけに、ダイエットを始めたと後から知った。
だから、お昼ご飯を少しだけ食べて、残りはこの樹にあげていたのだ。
「お弁当の栄養できれいな花を満開にさせてるんだよね。あれ、どうしたの櫻庭くん」
目を丸くしてあたしを見ている櫻庭くん。
「もしかしてお弁当の話は知らなかったの?」
それならちゃんと教えてあげないと。でもこのことは秘密だよ。
「いや、もういい」
そう、それは残念。また気が向いたときに教えてあげましょう。
「じゃ、俺はこっちだから。またな」
「うん、今日は付き合ってくれてありがと。また学校でね」
「ふぁあ!?」
何照れてるのよ。変な声出さないで。
あたしが大きく手を振ると、櫻庭くんもぎこちなく手を振り替えしてくれた。
怖かったけど、楽しい夜のお散歩だった。
今日は付き合ってくれてありがと。
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