第5話 四つ目の不思議
「次は、定番のトイレだな。昨日も三階の女子トイレの話出てたもんな」
「やだ」
「何でだよ」
「やだったらやだ!」
女子トイレに興味を持つなんて変態極まりない。それに三階の女子トイレは絶対にダメ。
「でもさ、定番は見に行く価値があると思うぞ。三階がダメなら一階にしようぜ」
何でそんなに行きたがるのよ。女子トイレの中には一歩も入れないからね。
というわけで一階のトイレ前。
「じゃあたしはこっちだから、櫻庭くんはそっちね」
あたしは櫻庭くんがひらひらと手を振ってトイレの中に消えていくのを確認して、女子トイレに入った。
トイレの中はいたって普通ね。どこのトイレも一緒の作り。
何一つ変わった様子はない。
昨日の話にあった、閉まっていると個室や、トイレの中から声が聞こえてきたらあたしは猛ダッシュで逃げ出すかも。
カラカラカラカラ
「ふぁあ!?」
急な物音にびっくり。何かあったら猛ダッシュで逃げるつもりが動けない。
でもよくよく聞くと、どうも女子トイレの中からではないみたい。
隣の男子トイレからかな。とすると、犯人は櫻庭くんだ。
とりあえず、ここは終わりにしよう。
「櫻庭く~ん」
櫻庭くんは外にいなかったので、扉越しに呼んでみた。
でも返事はない。
もしかして個室に入ったら便器に吸い込まれたとか。
「そんなこと……ないよね。櫻庭く~ん」
何で返事しないの?
こんな所であたし一人にしないでよ。
「返事がないなら、見に行くからね」
便器に吸い込まれて、手だけ出ていたら大惨事。流さないと、じゃなくて助けないと。
「入りますよ~」
初めて男子トイレに侵入。ある意味あたしの緊張は最高潮。
勇気を出してまず一歩。
ちょっと匂うが、見た感じ至って普通。いくつかの個室と、向かいに並んだいくつかの小便器。
でも一番奥の扉が閉まってる。
もしかしてそこにいるの?
近づいてみると『使用中止』の張り紙。ここには居ないよね。
念のため全ての便器の中を見てみても、櫻庭くんが流されたかわからない。
もうあたしを一人置いて、どこにいったのよ。
もしかして。
トイレじゃなく、鏡に吸い込まれたの?
入り口横に大きな鏡。夜の鏡も不気味。
見るのが怖いけど、見ないと……ね。
「ぎゃー!」
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