第1話 放課後の出来事

「ねえねえ、昨日のテレビ見た?」

 放課後の教室、帰り支度をしている女子達三人の話し声に、なんとなくあたしは席から聞き耳を立てていた。

「学校の七不思議って番組。あれ、怖かった~」

 七不思議?

 あたしはテレビを見ていなかったし、恥ずかしながら始めて聞く言葉だった。

「みたみた。怖すぎて、昨日はお母さんと一緒に寝た。私は音楽室のが一番怖かった」

「うそ~。私は実験室のあれ、何だっけ、勝手に動き出すの、あれが一番怖かったよ」

 どうも怖い話らしい。あたしの好奇心は最高潮。こっそりと話を聞くことにした。


 女子達の話によると、学校には七つの不思議な出来事があるらしい。

 そのどれもがとても怖い話らしい。

 昔からどこの学校にもそんな話があるようで、所によって微妙に内容は違うらしいけど、似たようなものだという。

 

 そして、テレビの話からこの学校の話になった。

「この学校にも七不思議があるって噂聞いたことある?」

 二人は「知らない」といいながらぶんぶん頭を振っている。

「クラブの先輩から来たんだけどさ……」

 長い髪の毛の子がこの学校に伝わる七不思議を話し始めた。

 あたしはドキドキしていた。この学校に不思議な噂話があるなんて全く知らなかったし、なんとなく面白そうだった。

 多分怖い話だろうけど、聞く価値があることはなんとなく感じていた。

 あたしはそのまま最後まで話をきくことにした。


「そして、七つ目はね」

「あ、ごめん。もう帰らないと」

 七つ目の話が始まると言うときに、もう一人の女子が急に帰ると言い出した。途中からもじもじと様子がおかしいと思っていた。

 あたしもそうだったけど、正直言って怖かった。

 その子も「それ、テレビでやってたのと似てるね」なんて言いながら、余裕の表情をしてたけど、持ったのも三つ目ぐらいまでだったかな。

 結局六つ目の話で、その子が帰ったのでお開きになってしまった。


「よう、ハナ」

「ふぁあ!?」

 びっくりして椅子から落ちそうになった。

 いつも背後から急に声をかけてくるのはもちろん櫻庭くん。絶対にわざとだ。

「いつからそこにいたの?」

 声をかけられるまで全く存在に気がつかなかった。

「いつからって、ねえねえ、昨日のテレビ見た? の当たりからかな」

 最初からじゃないのよ。

「櫻庭くんはこの学校の七不思議知ってた?」

 多分男子の間ではこんな話はしないと思うけど、もしかすると知っているかも知れない。

「俺が知ってると思う?」

 あ、忘れてた。彼には友達なんていないんだった。寂しいねぇ。

「だよね。さっきの話、七つ目ってどんなのだろ、気になる」

 七つ目の話を知るには、さっきの彼女から話を聞き出すか、実際に見るかのどちらかかな。

 今から追いかけて聞き出すのもおかしな話だし。とすると残るは一つ。

「やめとけって。そんなの知って何になるって言うんだよ」

 机の上に座って、あたしは見下ろされている。

「別に何になるって訳じゃないけど、ただの興味かな」

 櫻庭くんは、フン、と鼻で笑って教室から出て行ってしまった。


 七つ目が気になって、今夜は眠れないよ。

 それなら行動あるのみ。七つ目だけでなく、全部確かめてやろうじゃないか。

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