この学校の七不思議

温媹マユ

プロローグ

 来てしまった。夜の学校に。


 雲が厚く今にも雨が降りそう。もちろん月明かりはなく校内はよく見えない。

 所々に明かりがともっているため、なんとなく雰囲気はわかる。


 今の時刻は深夜二時。警備員が見回りを終えて校門の守衛室に戻る時刻。

 やはりこういうことは雰囲気が大事。裏門の陰に隠れて今かいまかと待つのがいい。

 ほら、懐中電灯を持ったおじさんが校舎から出てきた。

 これでもう校内には誰もいない!

 あたしの興奮は最高潮。裏門からだと絶対に気付かれない。さて、侵入しますか。


「よお、ハナ」

「ふぁあ!?」

 びっくりして変な声が出たなじゃい。

 あたしを呼ぶ声の方を向くと、そこには一人の男子。こんな風にあたしのことを呼ぶヤツは一人しかいない。

「なんで櫻庭くんがここにいるのよ」

 いつからいたのか、電柱にもたれながらあたしのことを見ている。その目、絶対不審者だと思っているね。

 確かにこの時刻になるまで校門の前を行ったり来たりしていたし、人が通る気配を感じると曲がり角に隠れていたし。

 でも一般的に見れば、今時長ランを着てガチガチのリーゼントの方が不審者だ。

 本人はその姿が格好いいと思っているらしく、時代遅れもいいところ。


「だってハナは絶対に来ると思ったからさ」

「はぁ?」

 あたしはあんたの何なんだ。

 でも実際に櫻庭くんの言葉通り、ここに、それもこんな夜中にやってきたのは間違いない。


 櫻庭くんとは腐れ縁で、昔からよく知っている。でも昔はいつだったのか、忘れてしまった。

 ただの知り合いというぐらいで、友達と呼べるような素敵なものではない。

 櫻庭くんは自由奔放でたまにしか学校に顔を出さない。

 そんな櫻庭くんが昨日の放課後、三年B組にやってきたのだった。

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