おせっかいな彼女へ

勝利だギューちゃん

第1話

「久しぶりだね、忘れられたのかと思ってたよ」

久しぶりに、彼女に再会した。

2年間も、顔を見せていなかった。


「いろいろあってね。そっちはどう?」

「変わらないよ。君は変わったね」

「そうかな?」

「うん、何て言うか、貫禄がついたよ」

「大袈裟だな」

彼女は笑う。


「寒くない?」

「うん、平気だよ」

彼女は笑う。


この笑顔が見たくて、毎日頑張ってきた。


「ところで、おじさんとおばさんは、元気?」

「うん、何とかくたばらずに、生きているよ」

「くたばるって、自分の親でしょ」

「親だから、言えるんだよ」

「親しき仲にも礼儀あり、わかった?」

「はーい、はーい」

「返事は1回」

「はーい」

「のばさない」

「はい」


昔と変わりのない彼女とやりとり。

いつも、彼女にリードされていたが、全く変わっていない。


まあ、楽でいいが・・・


「ところで、その後どう?」

不意に彼女が尋ねてくる。

「何が?」

「私をモデルに、小説を書く話」

「プロット段階」

「遅いな・・・早くしてよ」

「妥協はしたくない」

「相変わらずだね」


真面目なのが、君のいい所でもあり、悪いところでもある。

いつも、彼女に言われていた。


でも、こればかりは、妥協はできない。


「じゃあ」

「もう帰るの?」

「うん、忙しいからね」

「そっか、また来てね」

「うん、約束するよ」


こうして、彼女と別れた。


次に会う時は、持ってこよう。

彼女との約束通り、彼女を主人公にした本を・・・


題は、「おせっかいな、彼女に捧ぐ」


せめて、小説の中では、元気でいてほしい。

そう願って、書こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おせっかいな彼女へ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る