第六話「ひとときの幸せ」

「穂香」

暖かな温もりが二人を包む。

この温もりは本当にあるんだ。

「穂香、俺には君しかいないんだ」

「過去に愛した女がいた。だけど、彼女は俺を愛してくれなかった」

「好きになればなる程、君が遠くへ行ってしまうかもしれないことに怯えてるんだ」

そっと眠る穂香の頬に触れた。

「だから…俺の傍から離れないでくれ」

そっと優しく穂香の頭を撫でる。すると穂香が目を覚ました。

「隼人さん?」

いつもと違う眼差しに優しい笑顔。

(この人と恋をすることが幸せなんだ)

今までの恐怖が少しずつ減っていく。

今までの寂しさが少しずつなくなる。

それが私にとっての愛情。

普通の人とは違う恋愛の形で現れた。

目の前にいる彼が、今愛するべき人なんだって。

「ここに君がいるだけで、幸せだと感じてるよ」

「幸せ…なんですか?」

「ああ、そうだ」

(私が幸せになる権利なんてあるの?)

思わず泣いてしまった。


この人は本当は優しい人なんだって。

この人は本気で誰かを愛したいんだって。


一人で寂しかった時、苦しかった時、辛かった時、誰も傍にいてくれなかった。


こんな時に誰かいてくれたら…って何度も思った。


「好き」と「希望」を光として例えてきた穂香にとって、全く違う恋愛の方が向いてるのかもしれない。

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