第二話「悪夢の始まり」

「んんっ」

何度もそそる愛撫行為に、穂香は、思わず身震いをしてしまった。

「感じるのか…?嬉しいよ。穂香」

「いっ嫌だ、やめてください!」

視線が真っ黒だ。それに部屋も暗いと感じたせいか、更に恐怖心が増する。

「そうか…。君が悪いんだぞ?誘惑してくるんだからな…」

透明な液体が白い注射の針を通して、穂香の暖かくて白い皮膚に注入した。

「いっ嫌…嫌だ…!」

「大丈夫だ。安心しろ。すぐに良くなる」

「何を注入したんですか?」

「媚薬だ」

「え?」

更に優しく太腿を触られたせいか、穂香は思わず怖くなってしまった。

(暗いからやめて!暗いからやめて!)

過去の恋。本気だった恋。まるで彼が戻ってきたかと錯覚するように、わざと自分にしてる行為。

「穂香。好きだ。愛してる」

声が聞こえる。自分の声が出るたびに愛撫してくる隼人が怖かった。

怖くて、寂しくて、思わず泣いてしまった。

(どうしよ…。和誠さんのことを思い出して…泣くなんて…)

思わず泣いて濡れてしまった穂香の頬にそっと優しく触れながら、キスをした。


「穂香。落ち着いた?」

「はい…。すみません」

「んっんあっ」

キスをしながら、白い布を外してくれた。

赤くなる頬。だんだん早くなる鼓動。

お互い息が荒れている。

このままずっと見つめ合い、何がか途切れる音が聞こえた。

(この人…意外と優しいかも?)

「穂香。君には恋人がいたのか?」

図星だ。

「いましたよ。隼人さんと似ていました」

「そうか。その彼は…?」

「亡くなりました」

「ごめん。悲しい事を思い出させてしまって…」

「大丈夫です」


「続きをしよう」

「んんっ隼人さん」


この日からあの悪夢の始まりがまた繰り返す。


そしてそのせいで、穂香の深い傷跡がまた曝け出すことになる。


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