第三話「悲しみの底から」

吐き気がする。

暗闇に包まれたせいか、吐き気と頭痛でうまく移動ができない。

頭がクラクラして、目眩もしてきて、呼吸もどんどん辛くなってきてしまった。

すると一線の光が外から差し込む。

「大丈夫?」

「だ…大丈夫です」

「あとで俺が始末するから、出てきて」

「はい、すみません」

ジャーと蛇口に水が流れる音が聞こえる。

「暗闇にいると体調が悪くなるんです」

「そうか。もしかして過去で男に酷い行為をされたとか…?レイプとかそういうの…」

「!!は…はい」

恐る恐る返事をする。

「君にとって暗闇自体が不幸の始まりなんだな。次からは電灯のある部屋にするよ」

「は…はい、すみません。ご迷惑をおかけしました」

隼人に深くお辞儀をし、穂香は何も言えなかった。


悲しみの底から、過去のトラウマが蘇る。

それが何よりも辛かった。苦しかった。死にたかった。

だけど、救いの手は差し伸べられなかった。


例え、愛してる人が今目の前にいる彼じゃなくても…。

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